百鬼夜行 陽 


 2014.7.4     「鵺の碑」のサイドストーリー 【百鬼夜行 陽】  HOME

                     

評価:3

京極夏彦おすすめランキング

■ヒトコト感想

京極堂シリーズのサイドストーリーを集めた作品。ただ、メインどころではないため、本作を読んで本編のどの物語かを瞬時に判断するのは難しい。印象的なキャラの場合は、それなりに覚えているのだが、それ以外のキャラの場合は、ほとんど印象にない。過去の作品ばかりではなく、今後発表される「鵺の碑」のサイドストーリーまで収録されている。

これが本編の中でどの程度重要な作品なのかわからないが、いきなりサイドストーリーから入るというのも悪くないだろう。相変わらず、短編のタイトルである妖怪についてはよくわからない。が、おどろおどろしい雰囲気を表現するには、うってつけのタイトルだ。京極堂シリーズにどれだけ思い入れがあるかによって、印象は変わるだろう。

■ストーリー

悪しきものに取り憑かれてしまった人間たちの現実が崩壊していく…。百鬼夜行長編シリーズのサイドストーリーでもある妖しき作品集、十三年目の第二弾。

■感想
「青女房」は、魍魎の匣のサイドストーリーだが、メインキャラクターだけに印象深い。手先が器用な寺田が箱を作るようになるまでが描かれている。久保に操られ御宮様を開始する前の話なので、まともな状態が描かれている。

金をむしり取る極悪非道なイメージからは程遠いのだが、それでもどこか異常な雰囲気を感じずにはいられない。恐怖の物語のバックグラウンドとして、どのような経緯で箱を作るようになったかがわかるのは良い。ただ、魍魎の匣を読んでいない人にとっては、何ひとつ面白くない作品だろう。

「墓の火」と「蛇帯」は今後発表される「鵼の碑」のサイドストーリーだ。正直、本編が発表される前にサイドストーリーを先に発表することに、どのような意味があるのか。事件の概要は見えてこない。が、寒川英輔が転落死した場所で、青白く光る石碑の存在や、帯を蛇のように嫌う桜田登和子の存在など、本編に直結するような興味深いキャラクターが登場してくる。

サイドストーリーを先に発表されると、否が応でも本編が気になってしまう。本作を読むのは京極夏彦のファンなのだろうから、このパターンもありなのかもしれない。

「目競」は、榎木津についてのサイドストーリーだ。なぜ、榎木津が過去を見ることができるのか。そのことについて特別な説明はないが、幼いころから見えており、それについての周りの反応にがっかりしたことが強烈に描かれている。

榎木津は偏屈な印象があったが、それは一貫しているのだろう。薔薇十字探偵社を開業した理由も語られており、古くから続く関口や京極堂との関係も読むことができる。本編シリーズがしばらくご無沙汰なため、本作を読んで雰囲気を思い出すのも良いかもしれない。

本編シリーズを読んでいることが大前提だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp