バーボン・ストリート 


 2014.1.25   成熟した渋い大人の男 【バーボン・ストリート】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

80年代のエッセイ集。懐かしさと、自分が知らないことの奇妙さがミックスされた状態で読みすすめた。すでに故人となった人物についてのエッセイもあり時代を感じずにはいられない。日常のエッセイも含まれているので、作者の人となりがわかるのも良い。実はかなりのパチンコ好きだということ。酒は好きだが、無いと禁断症状がでるほどではない。

好きな映画や、古本に対する考え方など、他の作者の作品を読む際には、本作を読むことで、作者の心の動きがよくわかるだろう。あとがきを読むと、実は作者はかなりのイケメンだということにも気づく。作品からは読み取れない、作者の別の顔をひそかに知ることができる良作かもしれない。

■ストーリー

ニュージャーナリズムの旗手が、バーボングラスを傾けながら贈るスポーツ、贅沢、賭け事、映画などについての珠玉のエッセイ15編。

■感想
「奇妙なワシ」は印象深い。インタビューアが著名な人物へインタビューし、それを文章化したとき、一人称が「ワシ」となる場合がある。当時であってもワシを一人称につかう人は少ないだろう。ただ、その人物のキャラクターを考え、文章はワシとなる。

インタビューではオレと答えても、そこであえてワシに変換する。非常によくわかることだし、納得もできる。ただ、当たり前に行われている作業ということに驚いてしまった。自分が読んでいる普段の文章の中にも、読者の印象を裏切らないための仕掛けがいくつかほどこされているのだろう。

「運のつき」は、競馬で金を持ち逃げした男が、追い込みをかけられるなんて話を作者が盗み聞きしたことから始まる。ちょっとした金の持ち逃げが運のつきとなる。まるで三流ヤクザ映画のような展開だが、一般人は知りえない、日常の自殺のニュースの一部には、追い込まれた結果そうなったパターンもあるのかもしれない。

運というのを考えさせられる作品であることは間違いない。ほんの一時の気の緩みから、自体は取り返しのつかないことになる。強烈なインパクトはないのかもしれないが、それなりに感じるものがある。

「トウモロコシ畑からの賜物」は、作者が良く飲む酒はバーボンだという、ただそれだけの話。酒は飲むが、バーボンを飲んだことがない自分にとって、本作はバーボンを非常に魅力的な飲み物のように表現している。思わず次の日、バーでバーボンを注文してしまいそうなほどだ。

ビールは労働者、ワインはセレブのイメージがある。酎ハイは若者、焼酎は酒好きのおやじ。ではバーボンは?自分の中のイメージは本作によりできあがってしまった。作者のように成熟した渋い大人が飲む酒、それがバーボンだろう。だとすると、自分にはまだ早すぎる。

それぞれのエッセイに、時代を感じずにはいられないが、当時の状況がよくわかるエッセイばかりだ。



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