許されざる者


 2011.6.15  期待感が大きいだけに 【許されざる者】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
イーストウッド作品の中でもとりわけ評価が高い本作。初めて見たのだが、確かに面白い。しかし、そこまで特別な印象はない。勧善懲悪ものではないので、マーニーの行動にあまり共感できなかった。引退した殺し屋が復活するという図式にしては、対決する相手の”悪”が弱く、逆にマーニーの行動に違和感を感じる場合もある。保安官や途中に登場したイギリスの殺し屋の方が、キャラ立ちしており、興味深かった。仲間の敵討ちのために、熱くなるマーニーというのも良くわかるが、そこに生じる心の葛藤というのがあまり見えてこなかった。復活して最初の殺しに躊躇するのはわかる。その後の流れというのが、圧倒的な悪を倒すというのではないのが、なんだか微妙だ。

■ストーリー

C・イーストウッド監督による西部劇。かつて悪名を馳せていたマーニーは、今は農夫としてひっそり暮らしていた。そんな彼に、若いガンマンが賞金稼ぎの話を持ち掛け…。

■感想
結局は、マーニーは心底悪人だということを言いたかったのだろうか。一緒に行動した仲間は、引き返し、若いガンマンは怖気づく。引退し、子供たちとひっそりと暮らしていたはずのマーニーが、最後にはやけくそのように暴れまわる。亡くなった妻の話をしきりとしていたことと、最後のマーニーの姿に矛盾を感じ、マーニーというキャラクターが本当はどうなのかというのがわからなくなった。金のために相手を殺すという行為をどう考えているのか。仲間を殺された怒りが強いのはわかるが、そこにいたるまでにもっと大きな葛藤があったのではないだろうか。

そうは言っても、落ちぶれたマーニーが変わっていくのは面白い。保安官にバカにされ、ボコボコにされたが、最後には凄腕ガンマンとしての力を示す。まぁ、気分は爽快になり、ウェスタン映画としての定番は抑えている。ただ、対決相手が保安官であり、酒場の亭主であってもあっさりと殺される理由はない。途中に登場したイギリスのガンマンと早撃ち対決でもするかと思いきや、そうはならない。確固たる信念を持っているのは保安官のみ。なんだか、マーニーよりも、保安官の方がキャラクター的に立っているような気がした。

西部劇としての面白さか、マーニーの苦悩を見るべきなのか。C・イーストウッド作品のナンバーワンと言われていただけに、どうしても期待してしまう。その期待感に比べると、少しがっかりした。見ていて飽きることなく、楽しめるのだが、もっとのめり込む何かがあるかと思っていた。グラン・トリノ風なのかもしれないが、マーニーの行動は、最後まで正当化することができず、違和感を拭い去れなかった。最後の爽快感のみ楽しむのではなく、その過程も重要なのだろうが、ナンバーワンかと言われると、疑問に思ってしまう。

悪い作品ではないが、期待感が大きいだけに、ハードルは高くなる。



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