グラン・トリノ


 2009.5.10  確実に泣ける 【グラン・トリノ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ストーリー的にはよくあるパターンかもしれない。しかし、クリント・イーストウッドが演じ、いがみ合う隣人がアジア人という部分は新しい。偏屈な老人が隣人と仲直りし、充実した余生を送るなんていう生易しいものではない。ラストのシーンでは思わず涙がこぼれてしまうだろう。どうってことない役のはずなのに、クリント・イーストウッドが演じると、独特な味がでる。大事にしていたグラン・トリノをタオに託すなど、泣かせるシーンではないか。老い先を実感した偏屈な老人が、隣人を通して優しい気持ちになっていく。簡単なようだが、シンプルなだけに、特徴をだすのは難しい。わかっていることだが、泣けてしまうのは、もはやどうすることもできないだろう。

■ストーリー

自分の進むべき道がわからないアジア系の少年タオと、妻に先立たれて一人暮らしの、頑固で口の悪い孤独な老人ウォルト。ある日、年齢も人種も何ひとつ共通点のない二人が出逢う。ウォルトが何より大切にしているヴィンテージ・カー<グラン・トリノ>を、タオが盗もうとしたのだ。少年の謝罪を渋々受け入れた日から始まった、二人の交流。やがてそれは、かけがえのない絆へと変わっていく。少年の未来を守るために、ウォルトが下した最後の決断とは……。

■感想
本作は、下手したら人種差別だと訴えられる危険性さえある。しかし、内容を良く見ればそんなことは絶対にありえない。孤独な老人が隣人との繋がりを得ることで、だんだんと氷が解けていくように、心が穏やかになっていく。ウォルトとタオの関係はもちろんのこと、若き神父との関係も見逃せない。家族がつれなくすればするほど、人種も違う隣人との関係が強まっていく。素直なタオや愉快な隣人たち、今の老人にも共通するような、一種の社会のゆがみのようなものも垣間見えた気がした。

タオが付きまとわれているチンピラたちを排除しようとするウォルト。結末に通じる部分ではあるが、これがありきたりな復讐劇にならなくてとても良かったと思う。ある程度予想はつくのだが、感動を誘うにはこの終わり方がベストなのだろう。タオの表情を見ていると、その悲しみがこちらにまでうつっていくほど強烈に感じることができる。本作ではマイノリティであるはずのアジア人が主役となり、白人よりも黒人が力を示している。本作では白人はただの添え物にすぎない。これほど人種的なものを前面に押し出した理由は、何か意味があるのだろう。

偏屈で孤独な老人が次第に心を溶かしていく。その様は見ていて心地良い。何事にも一生懸命なタオ。それを、口は悪いが暖かい目で見守るウォルト。なんだか身内以上の関係になった二人にはグラン・トリノですら、ただのヴィンテージ・カーでしかない。ウォルトにとっては、もっと大事なものができたのだろう。ウォルトが自分の死期を察知し、今までやりたくてもできなかったことをする。なんだか淡々とこなすその場面が無性に悲しみをかもしだしている。ウォルトの表情は晴れ晴れとしているが、この後に起こることを想像すると、哀愁漂うその表情は頭の中にしっかりと焼きついている。

クリント・イーストウッド最後の出演作品は、やはりとてもすばらしい作品となっている。



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