館島  


 2013.8.26     館のトリックをあばけるか? 【館島】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

六角形の館。この手の館系ミステリーは綾辻行人がおなじみだ。本作でもそのあたりを意識しているのか、代表作である「十角館の殺人」についても触れられている。瀬戸大橋ができる以前の物語。なぜ、この時代にする必要があったのか?という疑問は結末まで読めばわかる。お決まり通り、館に何かしらのトリックがあるのだが、それに気づけるか、気づけないか。

自分の場合は、早い段階でこの館にどのようなトリックがあるのか、うっすらとだが連想できた。そのため、トリックがわかっても大きな驚きはない。ありえるはずのない高所からの転落死体。どこから落ちてきたのか?その原理はわからないまでも、館の仕掛けがわかると、衝撃度は薄い。

■ストーリー

天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かう!瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人劇をコミカルな筆致で描いた意欲作。

■感想
天才建築家が不審な死をとげる。それも自ら設計した奇妙な館で。半年後、関係者が集まり、その場で連続殺人事件が起こる。登場人物たちは個性豊かで、ユーモアあふれる会話を繰り広げる。特に刑事と女探偵のやりとりというのは、シリアスなミステリーではありえない展開だ。

奇妙な形の館。六角形で同じ形の部屋がなん部屋もある。事件が起こると、とっさに想像したのはこの館が単純に回転し、上の階と下の階で別の人が泊まっているという状況ではないかということだ。オチは違うのだが、あながち大外れではない。

連続殺人事件のトリックについては、館の特性を生かしたすばらしいものだと思うのだが、動機がいまいち納得できなかった。ひとりの女を巡った男の争いなのか、はたまた汚職事件の口封じなのか、もしくは過去の因縁なのか。様々な状況が想定されているが、定番どおりまったく別の動機となる。

ただ、その動機についても、あっさりと納得できるものではない。作中のキャラクターがそれなりに疑問を投げかけているが、それでも納得はできない。適正な動機よりも意外性を重視した結果、こうなったのかもしれない。

作者の他作品と同様に、ユーモラスな展開となっている。特に刑事と女探偵のやり取りが秀逸だ。作者が野球ファンということで、相手を籠絡する状況を野球に例えている。どのようにして押し倒すか。それはまるでヒットエンドランのサインを出す監督のような気分なのかもしれない。

ミステリアスな場面で、突如登場する妄想。それらが、よいアクセントとなって物語に刺激を与えている。本作がシリアス一辺倒であったら、ちょっと物足りなく感じていたことだろう。

館のトリックはさておき、物語の流れは面白い。




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