十角館の殺人 


2006.11.14 これぞザ・ミステリーだ 【十角館の殺人】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
この手の本格的なミステリーは正直あまり好きではない。トリックを細かく説明されても”ふ~ん”という感情しかわなかい。普通に考えれば現実的なことではないし、あまりにも都合よすぎるように思えてしまうからだ。それなのに、なぜ本作を読んだかというと強烈に進められたというのと、自分の好みが変わっているかもという願望も含めて読んでみた。結論から言うと、今までよりもすんなりと楽しむことができた。結末も予想外の展開で驚かされた。一見すると閉じられた空間での殺人のように思えるが本質はもっと別のところにある。まさか、このパターンでくるとは思わなかった。

■ストーリー

奇怪な四重殺人が起こった孤島を、ミステリ研のメンバー7人が訪れた時、十角館に連続殺人の罠は既に準備されていた。予告通り次々に殺される仲間。犯人はメンバーの1人か!?終幕近くのたった“一行”が未曽有の世界に読者を誘いこむ

■感想
閉ざされた空間で連続殺人事件が発生する。これだけですでにある程度予想がつき、小難しいこじつけのようなトリックを長々と説明されるのだと思った。周到な用意とありえない偶然、それらが全て合わさって初めて事件は成立している。それを普段は学生だが頭のキレル人物が探偵役として解決する。今回もこんなパターンかと思ったが結末は違ったものだった。連続殺人事件に対する細かなトリックがメインではない。それよりも、もっと大きな枠の捉え方で見事にだまされたというような感じだ。

ただ、この作者の特徴だろうか、ところどころに
ミステリーオタク風な部分がある。作品に登場するメンバーがミステリー研究会だからなのだろうが、ミステリーの薀蓄を言われるとなんとなく雰囲気的にマニアックな印象だけが強く残った。根っからのミステリー好きにはこのあたりも好感を持たれるのだろう。

十角館という孤島の建物と、メンバー一人一人につけられたあだ名。最初はこのあだ名が如何にもという感じで拒絶反応を起こしそうになったが、最後にはこのあだ名がなければ本作は成立していないということを思い知らされた。判ってしまうと”なんだ”という感情がわいてくるのだが、そこに至るまでその発想は一切なかった。おそらく読者としては何かしらの予想は立てると思うが、この結論に達した人はまったくいなかったのではないだろうか。

王道ミステリーがあまり好きではない僕でさえ楽しんで読むことができたので、ミステリー好きには絶対にお勧めだと思う。



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