我が家の問題  


 2012.11.4    ささやかだけど、悩ましい問題 【我が家の問題】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

家族小説第2弾。「家日和」から続く短編集なのだが、相変わらずの面白さがある。家族に突然ふりかかるちょっとした事件からスタートし、物語は奇妙で面白い方向へと進んでいく。ある問題に対して、登場人物たちはいろいろな対策を練る。その結果、さぁ、どうなるのか…。で、オチは描かれていない。その後の家族の生活がどうなるのか非常に気になるところだが、結末は描かれていない。ドタバタする過程が面白いのだろう。「家日和」でロハスに目覚めた主婦が再登場し、今度はマラソンに目覚める。前作ほど面白さはないが、売れっ子小説家の妻の状況というのがよくわかる。インパクト的には前作の方が強い。それでも登場人物と年代が近いせいか、感情移入しやすい。

■ストーリー

完璧すぎる妻のおかげで帰宅拒否症になった夫。両親が離婚するらしいと気づいてしまった娘。里帰りのしきたりに戸惑う新婚夫婦。誰の家にもきっとある、ささやかだけれど悩ましい6つのドラマ。

■感想
どこの家にもあるささやかな問題。中にはささやかとは言えない問題もあるが、奇妙なリアルさがある。完璧な妻に嫌気がさし、独身時代に戻りたくなる男の「甘い生活?」は、なんとなくだがうなずいてしまう。夫の健康を気遣い、インスタント食品は食べさせず、すべて手作りの健康食。炊事洗濯すべて完璧。本作の男のように、妻にもっとだらけてほしいとは思わないが、インスタント食品を食べたくなる気持ちはわかる。作中でも語られているように、ただの贅沢な悩みにすぎないのだが、真剣に悩む男の姿がなんだか微笑ましくなる。

「里帰り」は、夫婦の実家が遠方にある場合にどうするかという、よくあるパターンの悩みだ。自分も近い状況なので、ものすごく感情移入できた。妻の実家でリラックスできないというのはよくわかる。妻帯者であれば、誰もが共感できる作品だ。ただ、独身者からすると「なんで?」と思うような心境もあるかもしれない。夫婦となると、義理の両親との関係は、永遠のテーマかもしれない。お互いが微妙に気をつかい合い、それでいて、相手にはリラックスしてもらいたい。なんだか奇妙だが、これが現実だ。

「妻とマラソン」は、前作「家日和」のロハス主婦がまたまた登場する。今度はロハスに飽きると、マラソンにのめり込む。ただ、ロハスの時とは違い、ひとり孤独に走るという流れだ。売れっ子小説家の妻というのはどのような立場なのか。夫が社会的地位を高める中で、自分は置いてけぼりの気持ちになる。夫と共に地位が上がったと勘違いするのか、それとも…。人間、生きがいがないと辛いというのはよくわかる。家族にも恵まれ、なに不自由ない暮らしをしたとしても、そこに生きがいがなければ人生に潤いはない。なんとも考えさせられる作品だ。

特別なオチはない。それでも、出来事に右往左往する過程が面白い。




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