2011.3.14 ジョン・レノンとの関係は? 【ウランバーナの森】
評価:3
奥田英朗ランキング
■ヒトコト感想
ポップスター、ジョンというのはビートルズのジョン・レノンのことなのだろう。とりたててビートルズに詳しいわけではないので、特別な印象はない。その状態で本作を読むと、なんだか作者にしては変わった作品だなぁという印象が強い。精神的に病んだジョンが、医者にかかって精神の平穏を取り戻していくという物語なのだが、どことなくイン・ザ・プールに似ている。というか、本作の方が先なので、もともとこの手のカウンセリング作品が好きだったのだろう。夢か現実か、ジョンにトラウマを残した人々が、軽井沢の地に現れる。現実感は少なく、どこか全体的に霧につつまれたような作品となっている。ひどい便秘に悩むジョンというのも、なぜ便秘を題材にしたのか、そこは読んでいる間中、疑問だった。
■ストーリー
その夏、世紀のポップスター・ジョンは軽井沢で過ごした。家族との素敵な避暑が、ひどい便秘でぶち壊し。あまりの苦しさに病院通いをはじめたジョンの元へ、過去からの亡霊が次々と訪れ始めた…。
■感想
ジョン・レノンファンならば、本作を読んで何か感じることがあるのだろうか。それほどジョン・レノンに詳しくないので、本作とどの程度リンクしているのかまったくわからなかった。そのため、余計な先入観なしに読むことができたのは良いが、もしかしたら面白いポイントを見過ごしていたかもしれない。単純に元売れっ子ポップスターが、日本においてなんだかよくわからない便秘に悩まされ、過去のトラウマに苦しみながら医者のカウンセリングを受けるという物語でしかなかった。もしかしたらジョン・レノンのエピソードとかなりリンクしているのかもしれないが、そこに面白さを見出すことはできなかった。
医者がカウンセリングし、悩みを解決するパターンというのは、すでに作者の得意分野なのはわかっていたので、デビュー作からこの手の作品を書いていたのには驚いた。ただ、明確なテーマがあり、原因と結果から解決策を導き出すたぐいの作品ではない。ベースにあるのは、作者のビートルズに対する思いなのだろう。そのあたりを何も知らない者が読むと、どうにも乗り切れないというか、物語の波に乗れないまま、いつのまにか結末まで駆け足で進んでしまったというような感じだ。
作中で最も力を入れられていたのが便秘のたぐいだ。ジョン・レノンは便秘に苦しんでいたのだろうか?なぜ便秘なのかよくわからなかった。確かに物語としては便秘が心因性な何かの鍵になるといった流れとなっているが、それでも不自然さは否めない。なぜ便秘なのか。便秘に大きな意味があるのか。とりたてて便秘でなければ物語が成立しないようには思えないので、このあたりが妙に気になった。今まで読んだ作者の作品に比べると、少し毛色が違うが、デビュー作ということは、これが作者の原点なのだろう。
ジョン・レノン好きがどのように感じるのか、聞いてみたい。
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