2011.9.1 子を持つ親が感じる思い 【とんび】
評価:3
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■ヒトコト感想
ちょっとやんちゃで粗暴なヤスが、子供が生まれてから変わっていく。突然の悲劇によって親子二人暮らしになってからの、ヤスとアキラの交流がメインだ。親子関係というのは複雑で、正解はない。本作も人によってはおかしいと感じるかもしれない。子供の成長と共に変わっていくかと思われたヤスも、根本は変わらない。しかし、アキラに対する深い愛がある。親思いのアキラと、息子をとことん溺愛するヤス。アキラが成長し、反抗期と進学、就職と進むなかで、ヤスの行動には心打たれてしまう。ありきたりな幸せな親子ではなく、不器用なヤスの内面がにじみ出ている。ヤスのへんに強情で意地っ張りで、寂しがりやな面と、アキラの心優しいおだやかな性格。二人はまさしく理想的な親子だ。
■ストーリー
つらいときは、ここに帰ってくればいい。昭和37年、ヤスさん28歳の秋、長男アキラが生まれた。愛妻・美佐子さんと、我が子の成長を見守る日々は、幼い頃に親と離別したヤスさんにとって、ようやく手に入れた「家族」のぬくもりだった。しかし、その幸福は、突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう―。
■感想
早い段階から、親子二人暮らしとなり、これから母親の思い出を胸にいだきつつ物語が進むのであれば、やばいなぁと思っていた。亡くなった人を思い出としてではなく、生きていればという感覚で描かれると、心に響いてしまう。本作はそうなるかと思いきや、メインはヤスとアキラの成長物語となっている。親子二人の生活では、アキラの成長と共に状況が変化していく。生意気さかりになると、親に反抗する。進学に悩めば、親の気持ちなどどこ吹く風で、好きな道へ進もうとする。アキラは何も悪くないのだが、不機嫌になるヤスの気持ちは嫌というほどよくわかる。
ヤスとアキラの生活がうまくいったのには理由がある。それは周りのサポートだ。田舎ならではの、周りがすべて家族のような関係。それは、ときにはわずらわしいと感じるが、本当は必要なことなのだろう。今となっては、ほとんどない状況かもしれないが、昔の古きよき日本では当たり前のことだ。ヤスの素直になれない態度であっても、周りがフォローし、アキラに対してきちんとした説明をする。後半になると、強情なヤスが子供で、冷静なアキラが親のように思えるほど、立場が変わっている。
息子を溺愛する父親というのは難しい。息子には好きなことをやってほしいと思う反面、近くにいてほしいとも思う。親であれば誰もが感じるモヤモヤとした気持ちを、ヤスが素直な心で代弁してくれる。自分が親となり、子を持つ立場となったら、ヤスの思うがままスネられる立場がうらやましくなる。世の大人たちは、親父のプライドというものが邪魔をして、子供の好きなようにさせてしまうのだろう。素直に近くにいてほしいと言うのはいいずらい。それはヤスも同じだが、なんだか、自分の気持ちを見透かされているようで、恥ずかしくなるような作品だ。
まだ息子が小さいとしても、息子を持つ親ならば、誰もが共感できるだろう。
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