すみれの花の砂糖づけ  


 2012.4.7   思いを直球で伝える詩 【すみれの花の砂糖づけ】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

詩集は今まで読んだことがない。本作で初めて詩集というものを読むのだが、小説とはまた違ったおもむきがある。なんの予備知識もなく詩を読んだとしたら、かなり理解に苦しむだろう。本作に限っては作者のエッセイなどをすでに読んでいたので、詩の内容がなんとなく想像できた。特に「いくつもの週末」が、作者とその夫との夫婦生活のエッセイなので、本作の詩の中でも似たような情景は、はっきりと思い描くことができた。これは誰のことを思っての詩だろうと、すぐに頭の中で想像できるので理解しやすい。それと共に、作者の複雑な心情というか、常人では理解しがたい面もあるということが、うっすらとわかった。詩の楽しみ方は良く分からないが、少なくともまったく理解不能というわけではない。

■ストーリー

「すみれの花の砂糖づけをたべると/私はたちまち少女にもどる/だれのものでもなかったあたし」。恋人と心のまま体を重ねもするし結婚をしているしどこへでも旅することができる。大人の自由、大人のよろこび。だけど少女のころ、一人決然と向きあった、ままならなさ、かなしみは、変わらず健全ではないか!―言葉によって勇ましく軽やかな、著者の初の詩集。

■感想
詩の中でいくつか印象に残った詩がある。それは、作者が夫について語る詩ばかりだ。相手のことが恋しくて、その思いが我慢できずにはちきれそうな、そんな印象ばかりをうけた。中には、うまくいかない関係を揶揄したようなものまである。当然、詩なのでそこによけいな説明や言い訳はない。エッセイのように、そこにいたるまでの経過を書くこともできない。そのため、いきなりこんな詩を奥さんから読まされたときには、旦那さんは飛び上がらんばかりに驚くことだろう。それだけ、直球な作品も多い。

昔、小学生のとき国語の授業で詩を書いてこいという宿題がでた。日記や感想文とは違い、詩を書くのは難しかった。自分の中ではそれだけ詩は特殊なものという印象がある。相手にどうやって伝わるかだけではなく、自分の思っていることを少ない文字数で表現するのは、相当に難しいことだろう。作者の思いは十分伝わってきた。が、もし作者のエッセイを事前に読んでいなかったら、随分と過激で自分の欲望に正直な人なのだなぁ、と思ってしまっただろう。それだけ、詩というのは直球で相手に伝わるものだ。

詩を読んで感想を述べるというのは難しい。人によって感じ方は大きく違うだろう。自分の中では特に共感できる詩はなく、逆に多少恐ろしく感じてしまったくらいだ。もしかしたら女性の中には、本作の詩を読んで、大きく共感できる人もいるかもしれない。特に恋愛や夫婦関係については、男女の違いは大きいので、すんなりと受け入れることはできなかった。作者の研ぎ澄まされた感覚が、日々のちょっとしたことを文字にすると、本作のような詩になるのだろう。この観察眼はおそろしすぎる。

詩だけに、何も考えずに文字を追いかけるとサラリと読み終えてしまうので、じっくり味わいながら読むべきだ。




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