2013.3.4 ビール好きにはたまらない 【隅の風景】
評価:3
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■ヒトコト感想
旅日記というべきか。ビール好きの作者が世界各地を周る。必ずしもビールの話題だけではない。作者が訪れた場所に、なにかしらなじみがあるか、作者の話題に共感できなければ楽しめない。自分の中では北京やスペインの話は共感できた。どちらも旅行先として行ったことのある場所だからだ。自分の知っているあの場所に、作者はどんな印象をもつのか。あの国民性については、どう感じるのか。それらがないと、正直辛いだろう。作者と同様に、心からビール好きであれば、ビールを飲む描写につられてビールが飲みたくなるかもしれない。プラハで飲む黄金のビールなんてのは、それほどビール好きでなくても、飲みたくなるのは確実だ。
■ストーリー
プラハで飲む黄金のビール、高所恐怖症の韓国登山、スモッグの向こうに霞む北京の太陽。出会えるかもしれない物語のかけらを求めて、今日も作家は旅に出る。身体の隅に今も残る旅のイメージをくっきりと映し出す紀行集。
■感想
プラハで飲む黄金のビール。なんておいしそうなビールなのだろう。それほどビールが好きではない自分でも、本作の描写を読んでいると、ビールがまるで甘く透き通った聖なる水のような印象を受ける。冒頭からビール好きが食いつくようなエッセイなので、この先ビールの話題ばかりかと思いきや、そうはならない。ビール一辺倒ではなく、ビールの話題に必須なのが、つまみの話で、そこからその土地の伝説や風習などが軽く語られている。ビール好きでなくとも、思わず引きつけられる内容だ。
韓国や北京は、ある程度イメージどおりの旅だ。ビールの話は少なく、その国独特の話題に終始している。作者が旅先にて、どのようなスタンスで旅行を楽しむのか。勝手なイメージでは、大名行列風に周りに付き人を従えて、各国の名所を周るかと思ったが、そうではないらしい。旅先で締切前の原稿を書くために徹夜したりと、あくまでも仕事というスタンスを崩すことはない。自分だったら、せっかくの旅行先で、ホテルで缶詰になって徹夜で仕事なんて、絶対にしたくない。
スペインへの旅エッセイは、スペインの独特な雰囲気が存分に表現されている。酒好きというか、飲むのが好きな人にとって、スペインは天国のような場所かもしれない。日の出が遅く、日の入りが遅いので、夜の8時でもまだ明るい。となると、人は必然的に飲み始めが遅く、飲み終わるのも遅い。スペインに行った人ならばわかると思うが、あの気怠い雰囲気というのは、スペイン独特かもしれない。自由気ままにフラフラと遊び歩いているイメージそのまま、国全体が自由にあふれているような気がした。今は経済的な問題もありどうかわからないが、スペインの一部はしっかりと表現されている。
ビール好きの作者が旅をすると、当然ながらビールの話が面白い。
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