推定少女  


 2011.8.27  中学生の逃亡者 【推定少女】

                      評価:3
■ヒトコト感想
逃亡者となった巣篭カナと、なぞの美少女・白雪。基本はこの二人のよくわからない逃亡記で、白雪が正体不明なぶん、物語が異様な楽しさがある。中学生の安易な逃避行ではなく、何かから逃げたいという発想がにじみでている。なんとなくだが、中学生が想像する、「こんな逃亡生活してみたいな」的な物語に思えた。同年代の少年少女が本作を読むと、大きく共感するのだろうか。大人になった今読むと、「まぁ、こんな気持ちにもなったかもね」的な感想しかない。全裸の美少女が銃を持ってエイリアンと戦うなんて場面は、そのままアニメなどで出てきそうだ。目的地が秋葉原というのも、中学生っぽさを強調している。ラストが複数あるのだが、バッドエンド的な方が良く感じたのはなぜだろうか。

■ストーリー

とある事情から逃亡者となった“ぼく”こと巣篭カナは、逃げ込んだダストシュートの中で全裸の美少女・白雪を発見する。黒く大きな銃を持ち、記憶喪失を自称する白雪と、疑いつつも彼女に惹かれるカナ。2人は街を抜け出し、東京・秋葉原を目指すが…

■感想
複雑な家庭環境と、誤解かわからないが、義父に部屋に押し入られたカナが逃亡する。着の身着のまま逃亡するカナと偶然であった白雪の二人で、秋葉原を目指すことになる。この手のテーマならば、作者が違えば雰囲気も大きく変わっていくだろう。重松清ならば、親との関係に悩み苦しみ、最後は仲直りなんてことになりそうだが、本作は違う。逃避行をメインとし、秋葉原のステレオタイプなオタク的描写と、親や大人たちに反発する中学生の、自由奔放な逃亡が描かれている。なんだか、自由すぎてうらやましく感じてしまう。

逃亡中に多少悩みのようなものがあるが、白雪の正体不明な行動と、宇宙人を連想させるさまざまな伏線から、奇妙な面白さがある。単純な逃亡ではなく、夢か幻か、エイリアンとの対決まであり、ただの現実逃避的に思えたが、そうではないらしい。この荒唐無稽さと、自由な逃亡が中学生らしい。親と喧嘩した中学生が、眠る前に泣きながら思い描く妄想に思えなくもない。親からの脱却と、宇宙人を思わせるなぞの美少女の存在。そして、金持ちな東京の中学生と協力し逃亡する。現実から逃げたつけは、すべて電脳戦士が受け入れたような終わり方が、どうにも中学生好みだ。

ぶっとんだ設定であり、逃亡の行きつく先は、複数のパターンのラストとして描かれている。バッドエンドとハッピーエンドがあるのだが、自分の中ではバッドエンドの方が好きだ。親から逃げ出すというのは、現実から逃げ出すことで、その結果どうなるのかは、電脳戦士が表現している。都合よく、「はい、何もなかったことにして日常が始まる」なんてことはありえないと、なるべきだ。すべては妄想にすぎず、夢オチということではないらしい。このハッピーエンドはあまりにも都合が良すぎないだろうか?

少女たちの逃亡劇は、ありえない展開といい、中学生に戻った気分で読むことができるだろう。




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