ステップ  


 2011.10.23  母親のいない家庭の変化 【ステップ】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

妻が急死し残された幼い娘と残された男の生活が、娘の成長と共に描かれている。正直、この手の作品は今の自分の立場とダブらせることができるので、感情移入しやすい。娘の成長に四苦八苦する父親の姿を赤裸々に描かれると、かなり心に響くだろうと思った。物語は、娘と男の関係よりも義理の両親との関係に重点をおいている。もし男が再婚したら、義理の両親との関係は薄れてくる。当然の事実が裏にありながら、ぎこちない関係が続いていく。娘の成長における問題を描くのではなく、娘と男の周辺の出来事を描いているのが意外だった。母親のいなくなった家族は、周りを含めていろいろな出来事があるのだろう。男の再婚が常につきまとうというのも、本作の特徴かもしれない。

■ストーリー

結婚三年目、妻が逝った。のこされた僕らの、新しい生活―泣いて笑って、少しずつ前へ。一緒に成長する「パパと娘」を、季節のうつろいとともに描きます。美紀は、どんどん大きくなる。

■感想
連作短編集である本作。冒頭から、もしかしたらかなり自分にとっては急所を突く作品かもしれないという雰囲気があった。幼い娘を抱えながら、仕事は部署を変え、小さな娘の面倒を見ながら男手ひとつで娘を育て上げる。特に娘が小さいうちに、母親の死というのを実感できないまま二人の生活が始まるというのは、かなり苦しくなる。自分に置き換えると、これ以上は読めない気がしたので、かなり恐る恐る読んだのだが、その心配は二作目からすっきりとなくなった。

物語の方向性は娘と男の関係を描くのではなく、義理の両親との関係をメインで描いている。男の両親の描写がほとんどなく、義理の両親との関係ばかりを描いている。それはある方向へ物語を導くためだというのは容易に想像できた。もし、男が再婚したとしたら、孫や義理の息子との関係が薄れてしまう。そんな危うい関係を、義理の兄夫婦を交えながら、娘の成長と共に描いている。思春期の娘特有の、父親に対しての反抗だとか、父親と二人っきりの生活での問題というのはほとんど登場してこない。

娘が成長し、その他の人たちが年老いていくというのは、なんとも言えない気持ちになる。自然の摂理としては当然のことだが、やはり自分の環境に照らし合わせると、いろいろと考えてしまう。おそらく、結婚して子どもがいるような人が読むと、かなり感情移入してしまうだろう。父子家庭でなくても、いろいろと考えさせられる部分はある。子どもと父親の心の交流をメインに描かれていないだけに、多少気分的には落ち着いて読むことができたが、家族関係の複雑さというのは、どうしても考えてしまう。

冒頭の妻が急死するという設定にはやられてしまうが、残された夫と義理の両親をメインとした物語だ。




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