2012.4.18 それでも演劇が好きだ 【シアター!2】
評価:3
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■ヒトコト感想
前作が劇団として利益を上げることが、どのくらい大変かが描かれていた。引き続き、本作でもそのスタンスは変わらないのだが、細かな部分は描かれていない。逆に本作では、シアターフラッグのメンバーひとりひとりに焦点が当てられている。前作では曖昧なままだったキャラクター付けが、本作でしっかりと個性が印象づけられている。物語での役割分担も明確で、メインの司、巧、千歳以外のキャラたちの動きも、すんなりと理解することができた。人を中心として描いているだけに、本作では劇団を商業的に成功させることについてのウンチクは少ない。前作同様、演劇の内容についてもあまり触れられていない。それでもキャラの個性が立っていれば、十分楽しめる。
■ストーリー
「2年間で、劇団の収益から300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」―鉄血宰相・春川司が出した厳しい条件に向け、新メンバーで走り出した『シアターフラッグ』。社会的には駄目な人間の集まりだが、協力することで辛うじて乗り切る日々が続いていた。しかし、借金返済のため団結しかけていたメンバーにまさかの亀裂が!それぞれの悩みを発端として数々の問題が勃発。旧メンバーとの確執も加わり、新たな危機に直面する。そんな中、主宰・春川巧にも問題が…。
■感想
前作から着々と借金を返し続けるシアターフラッグ。本作では軌道に乗り始めたが、今度は内部のゴタゴタにより問題が発生する。きっかけは商業的利益を上げることが発端だが、劇団員の揉め事なんてことは、この手の作品にはありがちなパターンかもしれない。それでも、前作では劇団を維持することの難しさをメインに描いていたため、キャラクターの個性があまりはっきされなかった。その鬱憤を晴らすかのように、本作ではひたすらキャラの個性に重点を置いたエピソードが続いてくる。
主役であるはずの司や巧よりも、脇役の劇団員たちの個性が光る。冒頭のキャラクター紹介の挿絵により、イメージもしやすくなる。劇団内での恋愛感情や、ドジでお荷物な劇団員の扱いや、役者として売れる売れないの嫉妬など、劇団で起こりえそうな問題ばかりだ。それらの問題どれもがドロドロとしたものではなく、やけに爽やかにすっきりとした印象がある。基本的にシアターフラッグのメンバーは良い人ぞろいなので、吐き気をもよおすような憎たらしさはない。それが逆にメリハリがないと感じる人もいるかもしれない。
今回も演劇の内容についてはあまり深くは触れていない。人気がでるかでないかは、内容によると思うが、このシリーズではとりあえずそのあたりは除外している。商業的成功をおさめるには、外部的な要因が大きいというスタンスだ。そのため、いつも問題になるのは、売上げと費用と会場の大きさだ。今回も会場の問題が発生し、それは次回作でも大きなポイントになるだろう。劇団として2年間で300万の利益を出すことの大変さを、嫌と言うほど思い知らされる作品であることは間違いない。
劇団好きな人は楽しめるだろう。
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