2012.1.18 劇団は貧乏があたりまえ? 【シアター!】
評価:3
■ヒトコト感想
貧乏劇団ものだと石田衣良の「下北サンデーズ」を思い出すが、本作は同じ貧乏劇団でも物語の方向性は違う。下北が貧乏劇団の出世物語ならば、本作は劇団というものがどのようにして成り立っているのかがメインに描かれている。劇団を商業的に黒字化するのはどれほど大変で、どのようなことに金がかかるのか。まったくの素人であっても、劇団運営の大変さが十分理解できるだろう。そして、劇団ものには定番なのかもしれないが、劇団員たちの熱さというのが伝わってくる。極度のM気質かと思うほど、貧乏劇団を楽しんでいる。金に無頓着で好きな演劇をやる。このあたりは、貧乏劇団員の誰もがもつ持病なのかもしれない。恐らく本作の続きがまだあるのだろうが、この劇団の先行きが気になって仕方がない。
■ストーリー
小劇団「シアターフラッグ」―ファンも多いが、解散の危機が迫っていた…そう、お金がないのだ!!その負債額なんと300万円!悩んだ主宰の春川巧は兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わりに「2年間で劇団の収益からこの300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」と厳しい条件を出した。新星プロ声優・羽田千歳が加わり一癖も二癖もある劇団員は十名に。そして鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は旗揚げされるのだが…。
■感想
「下北サンデーズ」と比べると、まだ発展途上といった感じだ。劇団が存続するか否かの状態から、必死で商業的に黒字を目指す段階なので、これから広がっていくのだろう。劇団員ひとりひとりが純粋に劇団のことを考え、私利私欲に走るものがいない状態。出世競争だとか抜け駆けには無縁なので、終始ほのぼのとした円満劇団生活が描かれている。ただ、そんな中でも劇団を黒字化するための厳しい質素倹約の日々が待っている。劇団とはこれほど金がかかるものかと、知らない人は驚くことだろう。
シアターフラッグの実情を描きつつ、演劇の世界が商業的に成立しえないカラクリも描いている。好きでやっていることだから金に無頓着。社会人経験がうすいから、金管理ができない。そもそも劇団とは貧乏なのが当たり前という刷り込みがある。すべてが納得できる理論だ。小劇団であれば、運営するだけで赤字続き。そこそこ客を呼べたとしても、黒字化するのは相当に難しい。そんな世界で、春川司が鉄血宰相となり、劇団を商業的黒字化させようとする。時には鬼になり、テキパキと資金管理する姿はかっこよすぎる。
本作では演劇の内容はサラリと流されている。資金節約のため、衣装代のかからない設定を考えろだとか、小道具はできるだけ持ち出しする。なんていう、常に金に関しての話ばかりが登場してくる。スタッフの外注やアルバイト、果ては食事の手配まで、あらゆる雑多なことやらなければならない。演劇というのは舞台で演じられ、その内容に対しての問題ばかりがクローズアップされがちだが、本作のように、一つの演劇を実施するのがどれだけ大変かというのを、まざまざと思い知らされる作品だ。
演劇に興味がなくても、劇団を維持する難しさを知ると、興味がわいてくるかもしれない。
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