殺人鬼2  


 2011.6.19  圧倒的な気持ち悪さ 【殺人鬼2】

                      評価:3
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■ヒトコト感想
前作以上のグロテスクさ。前作を読んである程度耐性ができていたとはいえ、それでも強烈なものは強烈だ。ミステリの要素よりも、立て続けに襲いかかるスプラッタ描写に耐えられるか。グロテスクな作品が大好きな人にはこれほどすばらしい作品はないだろう。自分の中では特別好きではなかったので、わかってはいたが辛かった。圧倒的な殺戮描写。そこまでやる必要があるのかと思うほど、執拗に相手が苦しむ殺害方法を繰り返す。逆襲という副題が付いていたからには、殺人鬼に対して、何かしらの反撃があるのかと思いきや、そうではない。極限まで高めた殺人鬼への憎しみを発散する場がなかった。剣道の達人がそれなりに抵抗したが、それも一瞬のことで、その後には、何倍もの恐怖が待っている。

■ストーリー

あいつはやはり生きていた!双葉山中に潜むあの殺人鬼が、麓の街に姿を現わしたのだ。凄惨きわまりない殺戮の狂宴が、いま再び始まる。他人の“目”になる不思議な能力を持った少年・真実哉との対決の行方は?そして明かされる、驚くべきその正体とは…。

■感想
前作の続編という形だが、はっきりいって前作を読んでいなくとも、本作を楽しむことができる。殺人鬼の由来や前回の事件の細かな話はどうでもよい。すべてを吹き飛ばすような強烈な残酷描写が、ただただひたすら続いている。前作の生き残りがおまけ程度に登場するが、何か重要な役割を与えられているわけではない。新たな主人公が、どのようにしてこの惨劇から生き残るのか。人の意識に入り込み、他人の”目”となる能力によって、スプラッタホラーをミステリに変換している。

殺人鬼の正体が驚きの人物であることは間違いない。ただ、ミステリを読み慣れている人は、必ず気が付くだろう。仕掛けとしては面白いが、精神世界の話が続くと、どうしても違和感を覚えてしまう。他人の”目”になる能力についても、特別な説明はない。人の意識と共感できることも、テレパシー的なものとして理解はできるが、物語の要素としては都合が良すぎるように感じてしまう。ただ、インパクトがあるのはあくまでも殺戮描写なので、そこをメインととらえるなら、”目”はどうでもよい部分かもしれない。

スプラッタホラーが大好きな人は、間違いなくはまるだろう。作者の作品が好きなだけで、ガチガチのミステリ好きにはちょっと物足りないかもしれない。そして、グロテスク描写が苦手な人は、絶対に読んではならない。恐らく最初の数10ページを読んだだけで、耐えられなくなるだろう。ここまでターゲットをはっきり示しており、続編ともなれば、まさか一見さんが手にとることはないと思うが、それほど強烈なことは確かだ。

怖さというより、圧倒的な気持ち悪さがある。




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