殺人鬼  


 2011.5.30  心臓の弱い人はお断り 【殺人鬼】

                      評価:3
綾辻行人ランキング

■ヒトコト感想

読み終わると、強烈な殺戮描写のみ頭にこびりついている。ミステリっぽい雰囲気があり、最後に謎らしきものが解明されるのだが、そんなことはほとんどどうでもよくなっている。登場人物たちが次々と殺されていく様は、読んでいて圧倒され、あまりのグロテスクさに、頭の中に想像するのをはばかられるほどだ。物語の本質をひた隠しにし、殺人鬼の正体を最後まであかさない。本作を読む場合は、ミステリー的な面白さを求めるのではなく、ホラーとして楽しむべきだろう。山の中でくりひろげられる惨劇を読んでいると、ここまでやる明確な理由があかされるのだろうかと不安になるほどだ。阿鼻叫喚の地獄とはまさに本作のような状況を言うのだろう。

■ストーリー

夏期合宿のため双葉山を訪れた親睦団体「TCメンバーズ」の一行。人里離れた山中での楽しいサマーキャンプは、突如出現した殺人鬼によって、阿鼻叫喚の地獄と化した。次々と殺されてゆく仲間たち…手足が切断され、眼球が抉りだされ、生首は宙を舞う。血塗れの殺戮はいつまで続くのか。殺人鬼の正体は。驚愕の大トリックが仕掛けられた、史上初の新本格スプラッタ・ホラー。

■感想
夏合宿に訪れた団体が遭遇するとんでもない出来事。謎の殺人鬼によって、山中は地獄と化す。まっさきに頭に思いうかんだのは、13日の金曜日のジェイソンだ。いちど頭にイメージすると、常にジェイソンが動きまわる映像が頭に浮かんでしまう。ただ、ジェイソンはあっさりと、言い方をかえると後腐れなく一気にかたをつけるのだが、本作の殺人鬼は、ジワジワと相手をなぶり殺すような行動をとる。そこにどういった意味があるのかは、最後まであかされない。理不尽な状況だけに、怖さよりも驚きの方が強い。

読み終わると、強烈な殺戮描写のみ頭の残る。最後になんとなく、理由らしきものが語られるが、とうてい納得できるものではない。結局は、突如あらわれた謎の殺人鬼に、登場人物が殺されていくという、なんとも強烈な物語だ。ミステリとしての要素を作者はどうしても入れたかったのだろう。多少無理矢理感があり、そうまでしてミステリにする必要があるのかと思ってしまう。衝撃度でいえば、ラストのオチより圧倒的な殺戮描写の方が強い。

スプラッタホラーが苦手な人は読まない方がよいだろう。いつもの作者のミステリを期待する人も同様だ。頭の中に想像するのも辛くなるような残酷描写であっても耐えることができ、なおかつ楽しめる人がどの程度いるのだろうか。あまりの残酷さに、心臓をドキドキさせながら読んでしまう。まぁ、これほど読者に強烈なインパクトを与える作者の筆力はすばらしいとしか言えないが、読むにはそれなりの心構えが必要だ。心臓が弱い人は読むのをやめたほうがいいかもしれない。

強烈なインパクトがあるのは確かだ。




おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp