殺意は必ず三度ある  


 2013.7.24     面白野球ミステリー 【殺意は必ず三度ある】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

前作、「学ばない探偵たちの学園」で登場した探偵部の生徒たちが、今回も奇妙な事件に遭遇する。野球にまつわる連続殺人事件が発生し、野球の見立て殺人ではないかと考える面々。探偵部のメンバーが個性的な面白推理を展開し、なおかつ周りのキャラクターたちも、それに便乗する。

今回は、ある程度野球に詳しくなければ、楽しさは伝わらないだろう。補殺、刺殺、狭殺に併殺と野球を知っている者さえ、その深い意味を知らないまま使っていた用語がポイントとなる。特に補殺については、目からうろこが落ちた。世間の野球ファンのかなりの数が同じ勘違いをしていたことだろう。そんなちょっとマニアックな野球知識を活用した面白ミステリーだ。

■ストーリー

のんきを絵に描いたような鯉ヶ窪学園。敗退を続ける野球部グラウンドからベースが盗まれてしまう。オレ(=赤坂通)が唯一の下級生として在籍する探偵部員の総力を結集しても謎は解けない。後日、野球部とライバル校との練習試合終盤に事件は起きた。

白昼堂々、球場で発見された野球部監督の死体に騒然となる両校関係者と捜査陣。動機は不明、球場ではアリバイ実験も行われるなど混迷をきわめる事件に、オレたち探偵部三人が事件に首を突っ込んだ。しょうもない推理合戦の先に待つものは…。

■感想
いつもの探偵部の面々が、ヘンテコな事件に出くわす。事のほったんは野球部のベースが盗まれたことから始まる。なんのためにベースを盗むのか。この奇妙な出来事が、のちに事件を解く重要なカギとなる。作者が野球好きというのは、なんとなく想像できた。

過去の作品からしても、野球に関する面白うんちくがいくつかあり、かなりのプロ野球ファンなのだろうとわかっていた。本作では、そんなマニアックな野球ファンが、野球の知識を総動員し、面白ミステリーを作り上げている。多少野球の知識がないと、ついていけない部分があるのは確かだ。

いつもの「三馬鹿トリオ」、いや作中では「三馬鹿」か「馬鹿トリオ」のどちらかが、活躍というよりも、事件をばたつかせている。それなりに推理らしきものを展開するのだが、事件を解決に導くまでにはいたらない。本作では別の名探偵役が存在し、三馬鹿は、ただ中途半端な推理を披露するにとどまっている。

いつものごとく、面白フレーズやマニアックな知識に裏付けされた野球トリック。野球ファンであっても知らない、もしくわ勘違いしている知識の補完もできる。まさか、作者のミステリーを読んで、新たな知識を得られるとは思わなかった。

野球での見立て殺人というのは新しいのか。野球用語としては併殺など殺の文字がつくものがある。それらを見立て殺人として利用するのはありかもしれない。野球を知らない人にはなじみのない言葉だろうが、ミステリーのトリックを表現する言葉としては、結構良いのかもしれない。野球とミステリーは一見まったく繋がりはない。それを無理やりにでもつなげ、それなりに成立させ、さらに面白会話をちりばめて、それなりに面白くしているのはすばらしい。

野球ミステリーというめずらしいジャンルだ。




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