学ばない探偵たちの学園  


 2013.6.29      お笑い学園ミステリー 【学ばない探偵たちの学園】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

学園ミステリー。探偵部のメンツが学園で起こった事件の調査をする。ありふれた学園ミステリーと言われればそうかもしれない。特徴を上げるとするならば、探偵部の面々がユーモアにあふれているという部分だろうか。ミステリーかぶれの部長。プロ野球の阪急ファンのメンバー。そして、あらたに入部した赤坂。基本的にはこの3人が密室のトリックを解くために学園内を動き回る。

人が殺される事件であっても、どこか飄々とした高校生たち。リアルさはない。トリックの複雑さとふざけたキャラクターの面白さで物語は成立している。この3人のキャラで誰が名探偵かというと…。結局は探偵部の顧問教師が鮮やかにトリックを解明してしまう。

■ストーリー

呑気な雰囲気の私立鯉ヶ窪学園。転校生の赤坂通は非公認サークル・探偵部に入部させられた。彼らの目前で起きた密室殺人。被害者は、芸能クラスのアイドル目当てで侵入した盗撮カメラマン。事件後には、妙な名前の刑事コンビが現れ、美術教師が勝手な推理を披露し、音楽教師が謎の言葉を残すやら…。我らが探偵部と顧問教師は犯人にたどり着くのか。

■感想
妙な名前の刑事コンビがまず面白い。祖師ヶ谷大蔵や千歳烏山だ。探偵部の部長が多摩川だとか狂言回し役である転校生が赤坂など、作者が地名にこだわっているのがわかる。それらのキャラクターたちが、面白行動を繰り広げる。特に探偵部の面々が面白い。

密室ミステリーのセオリーを淡々と語り、何かがあると野球、それも阪急の選手に例える。作者のマニアックな例えは、知っていれば笑えるが、知らないと意味がわからない。幸運にも、作者が意図したギャグを理解できたのでニヤニヤ笑いが止まらない。

密室ミステリーは、ミステリーを揶揄するような流れからなのか、あらゆるネタを事前に探偵部の面々がつぶしている。第一発見者が怪しいだとか、最初に扉を開けた人が怪しいだとか。セオリーをつぶし、それ以外のトリックを考えさせる。

探偵部が考えるトリックとは別の答えを用意しなければならない関係上、トリックは非常に大掛かりで、ありえないように思えてしまう。物語がライトな雰囲気のため、事件の深刻さを感じることがなく、トリックの不可解さもそれほど伝わってこない。まぁ、この雰囲気だからこそ、ギャグが冴えるというのはある。

定番として、最終的にトリックを解明すべき名探偵が必要だ。本作では探偵部の面々ではとうてい荷が重いと思われていたが、やはり別に名探偵は存在した。それは、何かしら謎の多い探偵部の顧問教師だ。警察とも知り合いで、話を聞くだけで、頭の中でひとりで事件を解決してしまう。

ステレオタイプの名探偵だが、探偵部の面白キャラたちに多少翻弄されているのが面白い。強烈なインパクトはないのだが、軽い雰囲気と、ギャグがちりばめられた展開、そして、それらに反するような深刻な事件。学園内で2日続けて殺人事件が起きている雰囲気ではない。

マニアックな笑いについてこれれば、この軽さは癖になるかもしれない。




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