流星の絆  


 2011.2.8  白夜行を超えた読後感 【流星の絆】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

事前にドラマ版を見ていたので、多少の先入観はあったが、これほどシリアスな物語だとは思わなかった。ある一つの目的のために裏でうごめく兄弟たち。どこか白夜行を思わせる雰囲気だ。最初は詐欺行為を繰り返すだけの兄弟が、惨殺された両親の敵討ちを行おうとする。知らず知らずのうちにジワジワと犯人と思われる男を追い詰めていく。その手際の鮮やかさと、計算されつくした証拠品の数々。流れ的にこのまますんなりと犯人が捕まるかと思いきや、大きな落とし穴がある。三兄妹それぞれのバランスと、白夜行ほど悲壮感がないので、読んでいて心地良い。特にラストは復讐だけに命をかけたのではなく、その後の生活に、前向きな部分をみせているのがよかった。

■ストーリー

惨殺された両親の仇討ちを流星に誓いあった三兄妹。「兄貴、妹は本気だよ。俺たちの仇の息子に惚れてるよ」14年後―彼らが仕掛けた復讐計画の最大の誤算は、妹の恋心だった。

■感想
両親の敵討ちのため、三兄妹が協力し犯人と思われる男を追い詰めていく。鍵となるのは、父親が作ってくれた絶品のハヤシライスだ。このあたり、ミステリーとしてハヤシライスの味がポイントとなるのはかなり珍しい。いくら門外不出といっても、ハヤシライスの味が同じだからといって犯人となるはずがない。しかし、物語は巧みな情報操作と、数々の伏線から、なつかしのハヤシライスが登場したときには、確実に犯人ではないかという思いを抱かせる。この流れはすばらしい。

役割分担された兄妹たちの中で、長男の功一が異才を放っている。どこか白夜行の亮二を思わせる雰囲気だ。すべてを考え、先読みし人知れず策略を張り巡らし、最終的には目的を達成しようとする。他の兄妹たちが功一を信頼し、今まですべてうまくいっているだけに、この流れは納得できるものだ。捜査を続ける刑事たちとの駆け引きや、結末間近の犯人家族との交渉など、物語の面白さはこのあたりがピークだ。誰もが真実がわからない状態において、一つのまったく新しい真実が浮き上がってきた時、この物語の奥深さに思わず唸ってしまった。

ドラマ版の配役を頭に浮かべると、キャラクターのイメージが若干崩れてしまう。本作の功一は冷静沈着で頼りがいがあり、何に対しても動揺しない強い精神力と意志の持ち主に思えた。一つの目的のため、兄妹が協力し、目的を達成していく中で、妹のほんのわずかな失敗に思わずいらだってしまった。それほどキャラクターに感情移入していたのだろうが、すべてがすんなりと功一の思い通りにうまくいっては面白くない。そうわかっていても、うまくいってほしいという相反する気持ちが常に心の中にあった。

ラストがしっかりと前向きに描かれているので、このあたりの読後感は、白夜行よりも良いかもしれない。




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