2012.8.27 少女たちが躍動する近未来 【ルー=ガルー2 インクプス×スクプス】
評価:3
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■ヒトコト感想
ルー=ガルーから世界観はそのままに、あらたな事件が起こる。前回読んだのが、はるか昔のため、内容はおぼろげであったが、本作を読むうちになんとなくだが思い出してきた。近未来の世界で少女たちが奇妙な事件に巻き込まれていく。特定のDNAにだけ作用する毒の話や、凶暴化する児童など、何かが起きていることはわかる。その何かが、全てをシステムに管理された世界で、どのように表現されるのか。近未来の描写は、すべてを管理された世界の怖さがある。さらには、アウトローの人々がどのような暮らしを強いられるのか。前作を読んでいなくとも楽しめるが、物語の根幹としては前作を読んでいた方が入り込みやすい。結末間近、謎の毒の秘密が明らかとなり、その効力がわかると、衝撃を受けるだろう。
■ストーリー
少女達を襲ったおぞましい事件から3カ月が経った―。前回の事件の被害者・来生律子のもとを、謎の毒を持った作倉雛子が訪ねてくる。彼女は小壜を律子に託し姿を消す。未知なる毒の到来は、新たなる事件の前触れなのか!?突如凶暴化する児童達。未登録住民の暴動。忌まわしき過去の事件を巡る、妄執と狂気と陰謀。すべての謎が繋がるとき、少女達は新たなる扉を開く!
■感想
前作の事件後、隔離される少女たち。まず、前作の事件をほとんど覚えてはいないが、本作を読むうちになんとなく思い出してきた。物語として前作が必ずしも重要ではない。前作を読んでいれば、物語に入り込みやすいというのはあるが、大きな問題ではない。近未来の世界で、少女たちの周辺で奇妙な事件が起こる。人体実験か何かなのか。毒というキーワードや突然凶暴化する児童など、読者は必然的にある程度の想像をすることだろう。序盤では、誰が敵か味方かわからないまま、不安定な立ち位置で物語が進んでいく。
本作全般に言えることだが、少女たちの個性は豊かだが、常に違和感がある。すべてをシステムで管理された世界だからという説明もあるが、現在のよく言われる”現代っ子”をさらに尖がらせたようなキャラばかりだ。ハッキングし放題の天才少女や、バイクに熱を入れる少女。格闘の技術がずば抜けた少女に、占いに傾倒する少女。リアルな出会いが希薄な世界というのは、こんな世界なのかと恐ろしくなる。作中では、コミュニケーション障害というのが盛んにキーワードとして登場してくる。まさに、今と比べても極端な世界に思えてしまう。
謎的にはごく普通のミステリアスな物語だろう。毒の正体や、黒幕が目指した世界は壮大であり、恐ろしくもある。しかし、見方を変えると、現代に置き換えてもおかしくないような、そんな物語だ。ある画期的な薬を開発しようとし、それを求める権力者たちが金をだす。不老不死のように、権力をもった老人たちがほしがるモノへの投資というのは、現代にも存在する。その極端な例が本作の結末なのだろう。少女たちが巻き込まれた事件は、その世界観といい、近未来の世界を描いているように、はっきりと想像できてしまう。
作者らしくないといえば作者らしくないが、個性は発揮されている。
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