六月の勝利の歌を忘れない Vol2


 2011.8.11  祭りのあとの寂しさに、泣ける 【六月の勝利の歌を忘れない Vol2】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
松田の過去の映像を目にし、懐かしさから衝動的に本作品を見た。過去にVol1は見たが、そのときと今とではまた印象が違っている。なつかしの面々が予選突破を目指し必死に自分たちを鼓舞する姿はすばらしい。本作が特別なのは、カメラマンが選手の中に完全に埋没しているということだ。まさか試合前のロッカールームまで収録されているとは思わなかった。さらに極めつけは、ハーフタイムの映像だ。それぞれの修正点を口にし、コーチは体を冷やせと叫ぶ。後半が始まる直前、ロッカールームで円陣を組むのだが、その輪の中心にカメラがあり、全選手の表情を余すことなく撮っているのはすさまじい。勝ったときの興奮、決勝トーナメント進出が決まった直後、そして、負けた直後、それらがすべて偽りなしの状態で見られるのは本作だけだろう。

■ストーリー

FIFAワールドカップ2002に挑む日本代表を、宿舎入りの日から、惜しくも決勝ラウンドでトルコに敗れ解散するまでの約1か月に渡り、毎日を1台のビデオカメラが選手個人の部屋、練習、ミーティング、試合後のロッカールームなど、通常、完全にシャットアウトされるシーンに密着し、映像を記録。

■感想
1のときにも思ったことだが、本作にはすさまじい価値があるのではないだろうか。日韓W杯における、日本代表の選手たちの素をすべて映像におさめている。練習風景やプライベートだけでなく、試合前のロッカールームの映像などもある。よく考えれば、今までこんなドキュメンタリーは存在しなかった。茂野直樹というカメラマンがどんな人物で、選手たちとどのような関係にあったのかわからないが、ドキュメンタリーとしては理想的な存在感のなさだ。誰もカメラを気にせず、ロッカールームではまさに透明人間になったような気分で映像を見ることができる。

試合直前、激しく気合をいれ、大声を出しながらピッチへ向かう選手たち。ハーフタイムでは疲れた表情の中、修正点を言い合う姿。特に中田は、積極的に選手たちにいろいろな指示をだしている。コーチやスタッフたちはひたすらサポートにまわり、控え選手であっても、スタメン選手にアドバイスをおくる。トルシエの指示はもちろんだが、選手同士がお互いに意見を言い合う姿が非常に興味深い。後半へ向けて気合を入れるために円陣を組むと、その中心にはカメラがある。円陣を組んだ選手たちは、誰一人としてカメラを気にする者がいない。これは信じられないことだ。

メディアでは言及されないが、トルシエが個人名を出して批判していたのが印象的だ。選手を鼓舞するため、またはチームのことを思っての行動なのだろう。最後の試合で負けた後のトルシエの涙をみると、その真剣さを感じずにはいられない。負けたあとのロッカールームでは、どうなるのかと思ったが、次へ向けての言葉が聞こえ、選手たちの前向きな姿にも驚かされた。約10年前の出来事だが、今見ても当時の興奮を思い出す。このチームがベストだとは思わないが、同時期に興奮を共有したということで、見終わると変な寂しさがあった。

盛大な祭りの後のような、寂しさと共に、泣けてきたのは何故だろうか。



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