ララピポ  


 2011.3.5  性に異常に執着のある人々 【ララピポ】

                      評価:3
奥田英朗ランキング

■ヒトコト感想

SEX関連の短編集。作中の登場人物たちはどこか性に対して旺盛な好奇心を抑えることができず、崩壊していく。短編に登場する印象的な人物が、次の短編の主役となる。行き着く先が幸せではないとわかっていながら、後戻りできない人々。最悪のように重い物語ではない。人生に対してそれほど深刻にはならず、軽い気持ちですべてがなるようになれと考える人々だ。普通の大人の日常とは違う、非平凡な日常の中で、そんなことがありえるのかと架空の物語として、笑いながら読むのが良いかもしれない。どうにもならない袋小路に追い詰められながら、軽い感じで笑いに走る。それぞれの短編の結末はありえないような状況のため、そのシーンを想像すると、笑いがこみ上げてくる。

■ストーリー

みんな、しあわせなのだろうか。「考えるだけ無駄か。どの道人生は続いていくのだ。明日も、あさっても」。対人恐怖症のフリーライター、NOと言えないカラオケボックス店員、AV・風俗専門のスカウトマン、デブ専裏DVD女優のテープリライター他、格差社会をも笑い飛ばす六人の、どうにもならない日常を活写する群像長篇。

■感想
性に対して異常に執着のある人々の短編集。人生にあきらめを感じた人々。どこか悟りを開いたように、人生に対して無駄な希望を持たない。身の丈にあったというか、流されるまま、欲望のまま物語は進んでいく。物語のトーンは半分コメディといった感じだろうか。対人恐怖症のフリーライターの相手として登場したデブの女が、最後の短編では主役になるなど、それぞれの物語を違った視点で描いている。そのため、ある場面では笑え、ある場面では気の毒に感じたりもする。ただ、総合して言えるのは、本作に登場する人々は平凡ではない日常に流されているということだ。

本作の短編で最も印象に残っているのは、テープリライターの短編だ。冒頭の短編で登場した、ただのさえないデブの女かと思ったが、実はとんでもないことを裏でやっていたという衝撃。身の丈にあった男を探すために図書館へ通うというところや、自分が醜いデブだということをわかっての行動など、笑いをとおりこして衝撃すら感じてしまう。そして、何も知らずに都合の良い女として群がる男たちには、強烈な天罰が待っていることになる。場面を想像すると、思わず笑えてくるのだが、強烈なインパクトがあることは間違いない。

タイトルの由来は[a lot of people]らしい。確かにこの世界には様々な人がいる。それぞれが好き勝手に生きているようで、かすかな繋がりがある。なんら共通点のない、底辺をはいつくばるような生活を続ける者たちに、光はないかわりに、面白さがある。流されるだけの人生に、良いこともあれば悪いこともある。決してこうはならないだろうという反面教師的な見方だったり、自分の立ち居地を自覚し、安心したりというのもあるかもしれない。しかし、人の不幸を含め純粋な面白さがある。

短編の繋がりはうまいと言わざるお得ない。




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