PRIDE-池袋ウェストゲートパーク10  


 2012.11.29    世間ではこんな事件が起きている 【PRIDE-池袋ウェストゲートパーク10】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

いつものごとく、時事問題をベースとした短編集だ。スマホ全盛の昨今、スマホ内に重要な情報が集まった場合、そのスマホを落としたらどうなるのか。ニッチな市場を狙う地下アイドルビジネス。ブレーキのないピストバイクの事故問題。そして、生活保護費ビジネスなど、ワイドショーのネタになったであろうことを物語に反映させている。このシリーズを読めば、巷でどんな事件が起きているのかがだいたいわかってしまう。すでに確固たる地位を築いたシリーズだけに、固定ファンがいるのだろう。大きく方針を変えるようなことはせず、中核のネタだけ世間のニュースからつまみながら、いつものメンバーが活躍する。マンネリという言葉で片付けることのできないシリーズだ。

■ストーリー

自分をレイプしたワンボックスカーの4人組を探してほしい―ちぎれた十字架のネックレスをさげた美女はマコトにそう依頼した。広域指名手配犯B13号を追うさなか、若者ホームレス自立支援組織の戦慄の実態が明らかになる表題作ほか3篇、最高の燃焼度で疾走するIWGPシリーズ第1期完結10巻目。

■感想
「北口アイドル・アンダーグラウンド」は、地下アイドルビジネスをテーマとした短編だ。AKBのおかげで似たようなアイドルが乱立する中、地下でひっそりとニッチな市場向けにアイドル稼業にいそしむ女たちがいる。結局のところ、ストーカー被害をマコトが解決するという流れなのだが、30歳をこえても地下アイドルを続ける女の強烈なプライドを感じてしまう。現実では痛々しさが目に付くのだろう。本作でも、こっそりとそのあたりに触れているのだが、いつまでもアイドルを目指すことの情熱が強調されている。

「鬼子母神ランダウン」は、ピストバイクの事故の物語だ。ブレーキのない自転車であるピストバイクは、芸能人にも愛用者がおり、違反者として話題になった。自転車事故での犯人を探すという流れのなかで、いつものようにキングとGボーイズが活躍する。自転車での事故がどういった意味をもつのか微妙かもしれないが、人の人生を狂わす可能性のある乗り物なのは確かだ。時事問題に疎い人でも、ピストバイクが危険な乗り物で、事故の際にはどうなるのかがよくわかるだろう。自転車愛好者に注意を促すような作品だ。

表題作でもある「PRIDE」は、生活保護費の詐欺がテーマとなっている。現実ではヤクザが貧困層の生活保護費を搾取しているが、作中では爽やかなイケメン弁護士が悪役となる。表題作ということで、ヘビーな内容であり、Gボーイズとキングが活躍し甲斐のある流れだ。派遣切りに合う若者の物語というのは、作者は他作品でも描いている。そのため、いちどレールを外れてしまうと、這い上がれない世間の仕組みについての苦言もある。社会問題に鋭く切り込んでいるのは確かだが、結局は何も解決していない。いつもどおり、マコト周辺だけ、なんとなく決着がついたというだけだ。

シリーズ第1期完結というのが気になるが、2期があれば継続して読むだろう。




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