ポニーテール  


 2013.2.4     新米姉妹と新米家族 【ポニーテール】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

それぞれの両親が再婚し、お互いが姉妹となる。小学校6年と4年。できたての家族と姉妹。難しい年頃の子どもたち二人には、ひときわ困難な環境なのだろう。フミが無邪気にお姉ちゃんであるマキのポニーテール姿に憧れる姿はほのぼのする。が、本当の父親でさえあつかいが難しい年頃のマキが、新しい家族に対してとる態度というのは、わかっていても気になってしまう。お姉ちゃんに憧れる妹という図式と、突然姉妹となった困惑というのは、マキでなくとも混乱するのはあたりまえだ。そんな環境であっても、フミが健気に考えながら言葉をつなぐ姿というのは、心打たれてしまう。新しいお母さんや新しいお父さんとの微妙な気の使い合いなど、新米家族ならでわの心理が面白い。

■ストーリー

マキとフミは、できたてホヤホヤの「新米きょうだい」二人の心は、近づいたり離れたり、すれ違ったり衝突したり…こんなふうにして、わたしたちは少しずつ家族になっていく。母を亡くした小学四年生のフミ。親の離婚で苗字も学校も変えなくてはならなかった六年生のマキ。それぞれの父母が再婚して「家族」となった二人の少女が過ごした始まりの日々を、やさしく見つめる姉妹小説の決定版。

■感想
両親が再婚し、相手の連れ子は自分より2つ上の小学校6年生だった。フミはマキのポニーテールに憧れる。ただ、マキはフミのことを気にしつつもあまり相手にしない。この二人の関係というのが、単純な姉妹であっても難しい年頃なのに、お互いが連れ子という状況がそこに拍車をかけている。フミの、相手を気にしつつの無邪気な言葉と、言葉は少なく冷たい突き放した印象を与えるが考えて言葉を口にするマキ。どうしても二人の父親目線で読んでしまう。そして、マキよりも純粋なフミを応援したくなってしまう。

フミとマキと共に、それぞれの親も複雑な状況だ。マキの母親は離婚し、フミの父親と結婚した。フミの母親は他界。フミにとってのお母さんはどっち?という大人でさえ答えをとまどうような質問が登場してくる。再婚の難しさが、フミとマキの両親が気をつかう場面で伝わってくる。頻繁にある学校のイベントでも、両親が再婚したというのは、大きな出来事なのだろう。フミが死んだ母親のことを新しい母親と比較してはいけないと感じるのもよくわかる。子どもとは、単純なようで当然ながらいろいろと考えるものだと、あらためて感じさせられた。

感情移入するのは父親だ。ただでさえ難しい年頃の女の子二人。さらに、ひとりは再婚相手の連れ子。マキが異常な潔癖という場面を読むと、ひとごとではないように胃がキリキリと痛んできた。単純な新米姉妹の物語かと思いきや、実は新しい家族としての再出発を、子ども目線で描いている作品だ。フミがポニーテールに憧れ髪を伸ばす。フミの髪がポニーテールを結べるほど伸びると、つまり、それだけ時間が経てば、新米家族も立派な家族として成り立っているのだろう。

複雑な家庭環境の微妙な問題を、ポニーテールに憧れるフミ目線で描いている。




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