オジいサン  


 2011.7.22  知られざる老人の気持ち 【オジいサン】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

これが年金生活を送る独居老人の真実なのだろうか。当たり前に、老人というのは1つのステレオタイプとして見ていた。当然だが、老人にも個性があり、それぞれの生活パターンがある。ものすごいスピードで流れる現実からとり残されがちな老人であっても、考えることはある。地デジ化のことや、地域との関係など、面白おかしく語られている。とかく、老人世代は無視されがちだが、老人には老人の生活がある。正直、老人の気持ちをマジメに考えたことがなかったので、目からうろこが落ちる部分もある。独居老人となると、寂しさばかりがクローズアップされがちだが、そうではない。これがすべての老人の気持ちだとは思わないが、ある程度確信をついているような気がする。

■ストーリー

益子徳一、七十二歳、独身。定年後の人生を慎ましく過ごす独居老人の大真面目で可笑しくて少しだけせつない日常。じんわり沁みる老人小説。

■感想
老人といっても、ひとくくりにはできない。子供と孫と同居する老人と、本作の徳一のように独身の一人暮らしはまた違う。作中でもそのあたりに言及されている。かといって、子や孫がいないことについて、悲観的な書き方をしていない。あくまでも徳一が一人で暮らす中で感じた出来事がつづられている。中学生や高校生などの子供たちに対して、おじいさんというのはどんな存在なのか。赤の他人であっても、そこにいるだけで何かしらのプレッシャーを与える存在なのだろうか。若者から見た老人というのはよくあるが、逆パターンは斬新かもしれない。

徳一が日々生活していく中で、リアルタイムな問題というのがある。最も典型的なのが、地デジ化の話だ。確かに当たり前のようにテレビを買いかえているが、徳一が言う言葉にも一理ある。新しいものに流されるのがこの世の常識なのかもしれないが、突然、明日からテレビを見ることができませんと言われ、戸惑う老人も多いだろう。それ以外にも、町内の行事や、スーパーへ買い物へ行くおじいさんの気持ちが描かれている。平日昼間のスーパーには、おじいさんが多いらしいが、本当かどうか確認したくなった。

老人だろうと、若いときと気持ちは変わらないのだろう。老人になったからといって、いきなり性格も老人の性格になるはずがない。世間を代表して声を上げるような世代にとっては、老人というのはひと括りにしがちなのだろう。自分自身もそのように思っていた。老人といえども、個性があり、いろいろな考え方がある。老人会に参加したくない人もいれば、地域のパトロールと称して、無駄な徘徊はしたくないらしい。老人が日々、どんなことを考えて生活しているのか。本作の徳一が一般的とは思わないが、老人の気持ちなど、普段考えない人にとっては新鮮かもしれない。

中身は平凡だが、新しいタイプの主人公だろう。




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