人間の叡智  


 2013.6.6      こうすれば給料が上がる? 【人間の叡智】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

なぜ仕事はつらく、給料が上がらないのか?の答えを作者なりの考えで述べているのだが、かなり高度だ。というか、直接的な回答ではなく宗教や思想や国体など、大きな意味での原因を語っている。そのため個人単位でどうにかすればいい、というようなものではない。何年もかけて教育をやりなおし、その結果、何十年後かに変わっているという流れだ。

作者の説明は知的レベルが高く、古典に対してもそれれなりに理解していないとつらいかもしれない。作者なりにわかりやすく書いたのだろうが、それでもレベルが高い。ただ、最近の世界情勢についての話は非常に興味深い。イランがかなり重要で、一歩間違えれば核戦争になりかねないというのはかなり驚きだ。

■ストーリー

なぜあなたの仕事はつらく、給料は上がらないのか? TPP加盟はほんとうに悪なのか? 橋下徹氏にこの国をゆだねるべきか? こうした問題を解くキーワードが「新・帝国主義」です。いまや米露中、EUと中東は、「新・帝国主義」によって世界を再編し、国家のエゴ剥き出しで戦っています。

今こそ「帝国主義」という言葉の悪魔祓いをし、現状を冷静に認識するときです。食うか食われるかの帝国主義的外交ゲームの中で、少なくとも食われないようにすること。その武器になるのが、「人間の叡智」です。ハイレベルな世界情勢をわかりやすく語りおろした、佐藤優氏、渾身の一冊。

■感想
人間の叡智というタイトルから、何を想像するだろうか。まず最初に「なぜあなたの仕事はつらいのか」と語りかけている。答えは国家だとか、宗教だとか思想だとか、社会が悪いという論調になっている。作者の主張は、やはりレベルが高く、自分にはついていけなかった。

特にこの第1章に関しては、最初からやられてしまった。今までのありきたりな実用書では、仕事がつらい原因を簡単に説明していたのだが、本作はそうではない。根の深い原因を語り、その解決策は、これまた個人でどうにかできるレベルの話ではなくなっている。

第3賞で登場するイランの話は面白い。現在の世界情勢で、過去の東西対立に匹敵するような状態にあることに驚いた。イランがそれほど危険な国で、欧米が最も警戒する国だとは、日本にいると気がつかない。どちらかと言えば、イランは親日で中国や韓国なんかよりも付き合いやすい国だと思っていた。

イランが核開発に成功した場合、イスラエルとイランの間で核戦争が勃発する危険性がある。なんだか、今の時代では信じられないことだが、大きな出来事は一般人が知らない間に、水面下で着々と進んでいるのだろう。

ラストでは今の時代をどうやって生き抜くかが描かれている。といっても、今の自分をどうにかしろというのではない。今後自分たちの次の次の世代に向けて対策をしろという流れだ。子供にはマネー教育をしてはいけないだとか、仕事に対する考え方だとか、確かに納得できるものはある。が、資本主義社会では、他人をいかに出し抜いて、自分だけが儲けようとするのかが常だ。作者の言うとおり、ひとりまっとうな生産活動をしていると、いつのまにか最下層に居続けることにならないのだろうか?なんだか不安になる最後の提言だ。

作者の主張には、ある程度知的レベルが高くなければついていけない。




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