斜め屋敷の犯罪  


 2012.8.24   ガチガチの館ミステリー 【斜め屋敷の犯罪】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

占星術殺人事件の御手洗潔が鮮やかに事件を解決する。今回は「斜め屋敷」という、根本のトリックが館にあるので、どことなく綾辻行人の館シリーズに近いものを感じてしまった。密室で事件が起こり、不可解な状況となる。そんな中で、どのような仕掛けが裏に隠されているのか。館の仕掛けというと、どうしても小難しく感じてしまう。この手の作品が好きな人にはたまらないだろう。ただ、トリックが解明され、なんとなくだが、納得できた感じにはなるのだが、奥歯にモノが挟まったような感覚は否めない。ミステリーとして屋敷の展開図やその構造がわかる図がでてくるのは、作者から読者へのトリックを解けるかという挑戦の意味もあるのだろうが、難しすぎると感じるのは自分だけだろうか。

■ストーリー

オホーツク海を見下ろす宗谷岬に傾斜して建つ奇妙な館―通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にその館でパーティが開かれる。翌日、密室で招待客の死体が発見された!行き詰まる捜査陣の前に現れたのは、名探偵・御手洗潔だった

■感想
御手洗潔が活躍する正統派ミステリー。謎の館で密室殺人事件が起こり、それを名探偵が見事に解決する。オーソドックスであり、マニアックなファンに好まれそうな作品だ。館がありえないような造詣であるのは、もはや規定路線なのだろう。登場人物たちも、裕福でありながらどこか影のある人物たち。館の主が奇妙な人形を集める趣味があり、ピサの斜塔のように斜めに建てられた建物。異様な状況ではあるが、それが物語として、雰囲気作りに役立っている。何かあるだろうと思わせる要素はつまっている。

意味ありげな格好で死体が存在し、窓の外から異様な表情をした奇妙な男の顔が覗く。何から何まで怪しすぎる。それらをすべて怪しんでいてはきりがない。必ず館になんらかの仕掛けがあることはわかるのだが、その仕掛けがわからない。というか、あまりに常識外の建物のため、正常な思考では到底追いつかない異次元に吹っ飛んでいるような気がした。物語はオーソドックスに名探偵の登場ですべてのトリックが暴かれる。密かに、トリックはわからないまま犯人を予想していたが、見事にはずれてしまった。

この手の館トリックが好きな人には、よだれが出るような作品だろう。ガチガチの館ミステリー。作者から問いかけられるが、はたしてその段階で犯人およびトリックまでもしっかりと回答できる読者は存在するのだろうか。自分が細部まで考えずに読んでいるというのはあるのかもしれないが、まったくトリックは思いつかなかった。かといって、トリックが解明されると、驚きで感動するわけではない。「ああ、そんなトリックか」という感想しかない。人の思考の隙をつくような、まんまと騙されたという感覚がないから、そう思うのだろう。

王道ミステリーだ。綾辻行人作品が好きな人にはたまらないだろう。




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