涙流れるままに 下  


 2013.5.29     回りくどい描写もチラホラ 【涙流れるままに 下】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

上巻では通子の過去が語られていた。本作では、吉敷が冤罪事件を解決するというのがメインなのだが、通子が過去から決別することにも焦点があてられている。40年も前の事件をどのようにして解き明かすのか。かなり無理やり感はあるが、相変わらず吉敷のしつこいまでの捜査により、事件は解明されていく。

物語として、過去の事件を見事に掘り起し、新しい証拠を見つけ事件を解明するのは素晴らしいと思うが、いかんせん、長い。本筋とは関係のない描写が異様に多く、エピソードのすすみが遅い。吉敷の心の葛藤と、通子の過去の呪縛。そして、成長した二人。ラストでは、それなりに未来へ希望のもてる終わり方となっているので、読後感は良い。

■ストーリー

警視庁捜査一課刑事・吉敷竹史は、夫の冤罪を主張する老婦人に出会う。その恩田事件とは、昭和33年に盛岡で起きた一家惨殺事件だった。吉敷は単身、再捜査を開始!ところが、盛岡・釧路で対面した関係者はなぜか、別れた妻・通子と因縁の深い人ばかりだった…。日本の冤罪事件に、職を賭した一人の刑事と、元妻の凄絶な過去!奇才が放つ感動巨編。

■感想
40年も前の事件の冤罪を晴らす。となると、すでに証拠が消滅した可能性がある事件をどのようにして掘り起こすのか。吉敷が、すでに関係者がほとんど死に絶えた状況であっても、強引な手法で関係者へ近づいていく。

絶望的に思える状況であっても、諦めない吉敷の強い心はすばらしい。が、そこまでやることで結果が伴うのかどうかが微妙に思えてくる。結果として吉敷は冤罪事件を解明したのだが、それによる衝撃はあまりない。ただ警察内部の面子の話や、上司との関係など、吉敷の強烈な個性がでている部分は非常に興味深い。

通子の過去のトラウマの原因が判明する。今までの作品では、通子の異様さが描かれていたが、上巻ではそれに拍車がかかっていた。すべての元凶が明らかとなり、それを克服した通子には、明るい未来が待っているように思えてくる。ただ、通子のエピソードは吉敷のエピソードに輪をかけて回りくどい

通子の娘の話や、ちょっとした変化まで、細かく描かれているので、通子の生活がわかるというのは良いのかもしれないが、それが特別本編に必須かというとそうではない。このまどろっこしさも作品の一部なのだろう。

上下巻にわたる吉敷と通子の物語。二人の関係を修復させるには、これほど長大な物語が必要なのだろう。ラストの流れ的に、もしかしたらこのシリーズも終わりか?と思われたが、最後に吉敷が出世してシリーズが続くことになる。

吉敷の実直なまでに自分の信念を貫き通す姿というのは、物語の主人公としては多少めんどくさく感じるが好感が持てる。何もそこまで?と思うことは毎度のことだが、それを含めて、吉敷というキャラクターなのだろう。40年も前の冤罪事件を解明するという離れ業をやってのけた吉敷のしつこさの極みが本作で表現されている。

シリーズは変わらず続いていくのだろう。




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