ミステリは万華鏡  


 2011.11.17  ミステリーへの熱い思い 【ミステリは万華鏡】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者のミステリー好きが伝わってくる作品だ。ミステリーの知識、特に古典のファンにはたまらないかもしれない。江戸川乱歩から始まり、夢野久作やその他様々な作家のミステリーについて、作者の思いが語られている。それと共に、作者のミステリーに対するこだわりや、子どものころに熱を入れて読んだ作品の話など、ミステリー好きにはこれ以上ないというほどのエッセイだろう。自分としてもミステリーは好きなつもりであったが、さすがに年代の違いか、ついていくのは正直シンドイ。江戸川乱歩などは小さいころかすかに読んだ記憶はあるが、内容までは覚えていない。作者の知識に圧倒され、ミステリーに強烈なこだわりを感じる作品だ。

■ストーリー

「謎」に出会うと解いてみたくなる。解かずにはいられない。解けるまでやめられない!―そんな宿命的な性を持つ「男の中の男」北村薫が、ミステリの名作から、詩や絵画、テレビで耳にしたエピソード、食膳に供される魚のホネの秘密まで、この世の中にちりばめられた様々な謎を、愛をこめて解き語る。

■感想
ミステリー好きにはお勧めだ。作者の作品の中でのトリックについての解説や、本格ミステリーについての考え方もある。ただ、メインはやはり作者のミステリーに対する小さいころからの熱い思いだろう。万華鏡のように雑多な話題が登場するが、ほぼすべてが最後にミステリーに行き着く。これほど子どものころから徹底したミステリー好きで、大人になり職業にしてしまうのはすばらしい。このマニアックな知識は、作者の作品に存分に活かされていることだろう。まさに適材適所だ。

江戸川乱歩や夢野久作は古典として有名なのはわかっている。ただ、皆が当たり前に読んでいるという前提で進めるのは危険だ。本作を読むくらいのミステリー好きならばおさえているのが当然なのかもしれないが、自分はほとんど知らなかった。特に作品の内容に触れた部分では、ほとんどちんぷんかんぷんだった。ただ、それでも解説を読むと、どんな内容でミステリーとしてどこがポイントなのかを作者が優しく解説してくれ、その後に作者の疑問や勘違いが描かれているので楽しくなる。なんとなく、古典の名作を読んだ気になってしまった。

日常に存在するちょっとした謎をミステリーとして描くのが作者の得意な方式だが、本作でも日常の謎を解説している。最も印象に残っているのが「鯛の鯛」だ。鯛の中にもう一つ小さな鯛と呼べるような骨があるなんてことはまったく知らなかった。一般にも知られていないことだろう。こういったマニアックなことを作者と同じ目線で考えられ、そして解決していくというのはすばらしい。小難しく、戯曲やわけのわからない古典を解説されるより、日常の謎を作者が語るのは非常に興味深い。

ミステリーの古典好きにはおすすめだ。




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