2013.2.14 精神異常者の日記? 【眩暈】
評価:3
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■ヒトコト感想
御手洗潔シリーズなのだが、いつも以上に強烈で、「占星術殺人事件」よりも奇妙だ。ある青年が書いた異様な日記が物語の鍵となる。異様な日記がすべて真実だと言う御手洗。冒頭には、その異様な日記が描かれているのだが、普通ではない。精神に何かしら異常がある者が描いた支離滅裂な日記のような印象しかない。そんな日記が、すべて整合性のある日記だと語る御手洗の言葉には驚かずにはいられない。そして、どのようにして奇妙な日記がすべて現実に起こったことだと証明するのか、そこに興味が集中してしまう。御手洗の推理はかなりぶっ飛んでおり、それを証明する過程も面白い。絶対にありえないだろう状況も、すべて解き明かしてしまうこの強引さがすばらしい。
■ストーリー
新“占星術殺人事件”誕生!戦慄のミステリ『占星術殺人事件』を愛読する青年が書いた異様な日記にはどんな謎が秘められているのか。彼が目撃する荒涼とした世界の終焉と驚愕の事実。呪いの暗号が光を放つ
■感想
まるで世界の終わりを暗示したような異様な日記。マンションから外を見ると、肌が黒く焼け爛れた人たちがいた。そこには恐竜が存在し腕を噛まれてしまう。あげくのはてには、死んだ男女の体を上半身と下半身に分け、それをくっつけ両性具有者を作りあげる。精神異常者の妄想のような日記だが、御手洗はこれらがすべて真実だと言う。冒頭の異様な日記で、すでに強烈なショックを受けた上に、すべてが現実に起こったことだと語る御手洗。どのようにしてこの日記の出来事を証明するのか、興味がつきることはない。
異様な日記の雰囲気そのままに、後半では究極に恐ろしいマンションでの出来事がまっている。あるはずのないマンションの階。サリドマイド児や脳の仕組み。そして、脳さえ生きていれば人間は生存できるのかという、本来の人間を否定するような伏線の数々。すべてが奇妙な日記を証明する過程で登場してくる、恐ろしい出来事に繋がっている。異様な日記の謎を解き明かすために、日本国内にとどまらず海外にまで広がる行動範囲。スケールも大きければ、奇妙さも今までの御手洗潔シリーズと比べても段違いに大きい。
物語としては、あまりに多種多様な要素がつまっているので、混乱する可能性がある。ただ、基本は異様な日記に書かれた出来事なので、それさえしっかりと理解していれば問題ない。恐らくは、本作が出版された当時の世相を反映しているのだろう。公害問題が語られ、それにより影響を受けた者たちが、奇妙な行動をし始める。「占星術殺人事件」と違い、御手洗潔が早い段階で事件の全容を把握している。そのためスリリングさはないが、御手洗のひと言ひと言に驚かずにはいられない。御手洗が何かを話すたびに、驚愕な事実が少しづつ明らかとなる。
「占星術殺人事件」に勝るとも劣らない強烈な作品だ。
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