メガロマニア  


 2011.11.27  古代遺跡に興味があるか 【メガロマニア】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

旅エッセイ。旅する先は古代文明の跡地。作者の作品の中には古代文明をテーマとした「上と外」などがある。その雰囲気を感じさせつつも、作者が思ったことが描かれている。古代文明の跡地といっても、すでに観光地として整備されているので、ジャングルの奥地というわけではない。高級な五つ星ホテルに泊まり、ガイドをつけてマチュピチュなどをまわる。エッセイとして特別な何かがあるわけではない。旅をして、その場所に対しての思いをつづる。あいまには想像力を助ける写真もある。現地の人々の生活や、古代文明のすごさも十分伝わってくるが、そこに行きたいとは思わない。なんだろう、悪くはないが、せっかくの古代遺跡の魅力というのが、あまり伝わってこなかった。

■ストーリー

恩田陸の誇大妄想がインカ・マヤの地を疾走する。カラー写真全50点著者撮り下ろし。

■感想
売れっ子作家が長期間の旅にでるというのは、とても大変なことなのだろう。飛行機が苦手な作者だけに、苦痛をともなう旅らしい。あわただしいスケジュールと、古代文明が油断するとただの石と森だけだという事実を知ると、疲れはどっとくるかもしれない。本作では、作者自身が古代文明に興味があるということで、古代文明の知識と共に、訪れた場所に対しての細かな解説がある。朝早くホテルを出発し、登山のようにひたすら山を登る場面もある。なんだか、疲ればかりを作中から感じてしまった。

マヤ文明やその他の古代文明に対して、どれだけ興味があるかによって、本作のイメージも変わるだろう。作者並みの興味があれば十分楽しめるが、その他の人が読むとなると、厳しいかもしれない。作者の人となりやちょっとしたプライベートな部分が知れるのは良いのかもしれないが、中南米での旅行記、それもジャングルや石が積み上げられた特別な場所についての記述について、楽しめないと辛いだろう。観光地では当然ながら他の日本人も多数おり、古代文明の秘境という雰囲気は皆無なのだろう。なんとなくだが、作者のちょっとした嘆きのようなものも感じてしまった。

本作について、作者の苦悩のようなものが書かれている。作品を生み出す苦悩というか、外部から刺激をうけても、それを作品に反映することができないらしい。年齢の問題や、古代文明の遺跡程度の刺激であれば、作者のインスピレーションに響かないのかもしれない。作家として、今後の方向性までも暗示させるような記述だが、それがサラリと描かれているのがすごい。結局は、最後に日本へ帰ってくる場面でのエッセイの方が、なんとなく身近に感じられ、面白く読めたのは皮肉だろうか。

古代文明に興味がある人にはおすすめだ。




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