めがね


 2013.4.2     たそがれる才能はあるか 【めがね】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
どこかで見たような雰囲気かと思ったら、やはり「かもめ食堂」と同じ監督だった。というか、主役も同じなので、納得だ。流れ的には、かもめ食堂と同じだ。何か大きな事件や出来事が起きるわけではなく、ゆっくりと流れる時間を楽しむといった感じだろうか。

あくせくと働く現代人が忘れかけた何かを語りかけているようだ。特別な観光地がない南の島に旅行し、そこで何をするのか。ただ”たそがれる”だけというのが、自分としてはなかなか理解できない。貧乏性なので、旅行に行けばスケジュールをびっしり立て、いろいろと観光しなければ気がすまない。のんびりと”たそがれる”なんてのは、本当の意味で心が豊かな人しかできない楽しみ方なのだろう。

■ストーリー

南の島の小さな街。プロペラ機でこの地に降り立ったタエコはハマダという宿泊施設にやってきた。宿の主人はユージ。ほか高校教師のハルナや海辺でかき氷屋を開くサクラが、この宿に出入りしている。タエコは観光をしようと名所を聞くが「ここは観光する場所はない。たそがれるだけです」と説明される。

独特の空気が流れ、やさしいような、なれなれしいような不思議な人々にとまどうタエコは宿を変える決意をするが、新しい宿泊施設はとんでもないところだった…。やがてタエコを「先生」と呼ぶ青年が、ハマダを訪れる…。

■感想
「かもめ食堂」を見たときに感じた印象は、そのまま本作でも引き継がれている。作中に登場する料理が、いちいちうまそうだ。ちょっとした朝食でしかないのに、よだれがでて仕方がない。旅館の朝食となんら変わりがないはずなのに、食べたくなる。

南の島というロケーションがそう思わせるのか。それとも、本当においしい朝食なのだろうか。エビを無造作に剥いて食べるシーンや、庭でバーベキューをするシーンなど、それだけ切り取られても、うまそうに思えてしまう。前後関係なしにうまそうに見える食事風景はすばらしい。

旅先で何をするのか。必要以上に一緒に行動することを強要されるのはつらい。が、本作のようなゆるさならば、許せてしまう気がした。早朝の体操であったり、朝食や夕食をみんなそろって食べることであったり、ちょっとした合宿風にも思えてしまう。

何の目的もなく旅する人にとって、本作の島はつらいかもしれない。あくまでも”たそがれる”という目的があってこそ成立する旅なのかもしれない。一度でいいから本作のように、ただ”たそがれる”ためだけに旅行をしてみたいものだ。

本作に登場する人々がどんな職業かはよくわからないが、無性にうらやましくなる。おそらく、自分が同じ状態になり、自由な時間が手に入ったとしても、”たそがれ”だけに旅行へ行くことはできないだろう。何かをしなければもったいないと思い、ついつい忙しく活動的に過ごしてしまう。

”たそがれる”にも才能が必要だ。のんびりとした生活というのを送ってみたいとは思うが、なんだか恐ろしい。そんな人には、本作を見てちょっとだけでも”たそがれる”雰囲気を感じてみるのもいいかもしれない。

たそがれたい人におすすめの作品だ。



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