マンデラの名もなき看守


 2012.8.28   実話がバツグンに面白い 【マンデラの名もなき看守】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ネルソン・マンデラの物語で言うと、つい最近「インビクタス」を見た。そこで感じたマンデラの印象と本作ではずいぶんと違ってはいるが、本作の方が段違いに面白い。当時の南アフリカの状況を、白人の目から見た物語。マンデラが暴力を嫌う紳士だと、インビクタスを見たときに思ったが、それは大統領になってからの話。刑務所に拘留中は、なんでもありのテロの首謀者だった。主役を良いように描くだけでなく、事実は事実としてそのまま描く方が面白味がある。看守のグレゴリーがマンデラに様々な感情をいだいていくのはお決まりどおりだが、そのまますんなりマンデラに取り込まれるのではなく、家族や周りとの関係を重視するあたり、実話ベースだと感じずにはいられない。

■ストーリー

南ア初の黒人大統領、ネルソン・マンデラと、彼が27年にわたる獄中生活の中で出会った白人看守との触れ合いを綴った感動の実話。テロの首謀者・マンデラの担当となった白人看守・グレゴリーは、マンデラと接するうち彼に特別な感情を抱くようになる。

■感想
南アフリカで黒人初の大統領となったネルソン・マンデラの物語。主役は、獄中のマンデラと深く関わりあう白人看守のグレゴリー。アパルトヘイトにより白人が黒人を奴隷のように扱うのが当たり前の世界で、グレゴリーはマンデラと接することで、その世界のおかしさに気付く。今では当たり前のことであっても、周りがみな白人至上主義の中で、ひとり特異な意見を言うのは勇気のいることだ。本作ではそのあたり、葛藤あり、決断ありと、グレゴリーに降りかかる様々な出来事がとてつもなく興味深い要素となっている。

マンデラを取り巻く環境が変わっていくのにあわせ、グレゴリーの待遇も変わっていく。自分の信念を貫きとおしたグレゴリーやその家族。対して獄中に幽閉され続けるマンデラ。二人の対比がいつのまにか、協同で何かを成し遂げる同士のようになっているのが面白い。歴史的な名場面を絡めつつ、南アフリカが変わっていくのがはっきりとわかる。インビクタス的にラグビーを通して人種差別に意義を申し立てるというのも良いが、マンデラがテロ行為を続けながら、最後に諸外国の支持により権利を勝ちとったことを思い知らされるのは本作だけだ。

綺麗ごとではすまされない状況がいくつかある。本作を見ていて心地良く感じるのは、グレゴリーやマンデラが自分の信念を曲げず、権力者に対しても向かっていく気持ちを忘れないということだ。もし、グレゴリーが上司にゴマをすり、出世するような男であれば、こうもすっきりとした後味にはならなかっただろう。歴史的に重大なことを成し遂げるには、そのプレッシャーに負けないだけの強い信念が必要なのだろう。マンデラが聖人君主ではなく、グレゴリーが自分の家族本意に動くとしても、それはリアルさを倍増させる要素でしかない。

インビクタスよりもリアルさや面白さは、本作の方が数倍上かもしれない。



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