交渉術  


 2013.5.22     交渉のプロが手法を暴露 【交渉術】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者の外交官時代の経験をもとに描いた本作。今回は、交渉をメインとして描かれている。外交官時代に、ロシアの高官や政治家たちとしびれるような交渉を続けてきた作者だけに、説得力がある。何も知らない一般人は、交渉というのは、ただ誠心誠意相手に思いを伝えれば通じるものと思うかもしれない。

実情は、いかにして目的を達成するか。自分に不利な結果が予想される場合は、あえて交渉のテーブルにつかない場合すらある。本作に登場する交渉術は、一般人にも参考になるだろう。ただし、客先や上司との交渉に本作の交渉術をそのまま使うと、あまりにも強烈すぎて悪い方向へと流れる可能性がある。TPOに合せて使うことが必要だろう。

■ストーリー

交渉を通じて、官僚としての佐藤優を再検証する。外交官として、官僚として、交渉の最前線で闘ったスリリングなメモワール、かつ実用書。

■感想
実用書として本作の交渉術を学ぶのもいいかもしれないが、本作のポイントは別にある。いつものごとく、作者が外交官時代に経験したことをベースに描かれているので、おなじみの内容かもしれない。ただ、そこには交渉に焦点を当てたため、今までになく交渉相手の人間的な側面が、作者の視点で描かれている。

エリツィンやプーチンとの交渉もそうだが、強烈なのは日本の総理大臣たちとのやりとりだ。橋本、小渕、森の三人の総理それぞれの個性が伝わってくる。そして、総理とはとんでもなく大変な仕事なのだと思い知らされた。

作者は自分の交渉術と共に、一般人が知りたいことについても語っている。最近のニュースで話題になったが、外務省の職員がハニートラップにかけられたのだが、中国やロシアで女を使い外交官を脅すという手法がどのようなものなのかが描かれている。

一般人は、ロシアや中国は汚いことをするが、日本はやらない、というイメージを持っているが、実はやっていた。作者は特別意識せずに、ハニートラップと思わしき行動をとっていたらしい。まるでスパイ映画のような展開を予想していたが、内情は限りなく地味なのだとわかった。

作者の作品をある程度読んでいる人ならば、おなじみの内容が続くかもしれない。しかし、政府専用機の話や、外務省のエリート官僚たちの話は強烈だ。実名で相手の恥部を著名な作者が暴露する。実名で非難された人からすると、とんでもないことだが、名誉棄損で訴えられていないところからすると、すべて真実なのだろう。

外交官として外国人とのひりつくような交渉の数々よりも、実は外務省内部の出世争いの方が、読んでいて興味深かった。外務官僚とは、とんでもない人たちの集まりなのかと、変な誤解をしてしまいそうだ。

作者の実体験にもとづく交渉ノウハウは、やはり説得力がある。




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