功利主義者の読書術  


 2013.8.1     難解すぎる書評 【功利主義者の読書術】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者がおすすめする読書術。ただ、漠然と本を読むのではなく、本を自分の利益とする。自分の利益のための読書。功利主義者というタイトルどおりなのだが、当然内容は難しくなる。作者が利益となると考えておすすめする本というのは、当然レベルが高い。作者の作品を読んだことがある人ならば、容易に想像できると思うが、ある程度の知識がないとついていけない。

中にはマンガ本やタレント本など、やさしい内容の本もあるが、それはほんの一部にすぎない。メインはやはり宗教やインテリジェンスについての本だ。作者が紹介するのは、ほとんどが昔の作品だ。過去の有用な書籍を紹介し、自分がどのように活用したかを語る。普通の書評と比べると、求められる知識レベルが段違いの内容だ。

■ストーリー

功利主義的読書とは何か? それは本の大海から、本当に使える叡智を抽出する技術だ。聖書、資本論、名作古典小説からタレント告白本まで、実践的効用の薄いとされるジャンルの書物をあえて選択。表側のメッセージの奥に隠された、過酷な現実世界を戦い抜く方法を鮮やかに提示する。世界の非情さと教養の豊穣、いずれも知りぬく当代随一の論客による、挑発と知的興奮に満ちた読書指南。

■感想
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」が交渉の達人になるための教科書となる。確かに、作者が語る内容は納得できるが、あの長大な物語の一部をとりだし、交渉の達人となれるというのは、どうかと思った。有名な作品だけに、すでに読んでいる人もいるだろう。

自分は未読だが、それでも、交渉の達人になるというのは、内容の一部だろうと想像できた。名作を紹介するという観点では、ただ漠然とストーリーを説明するよりも、何倍も興味がわくのは確かだ。作者の売り方というか、おすすめの仕方は、人の興味を引き付ける力がある。

本作で取り上げる作品の中で、異色なのは間違いなく「うずまき」だ。このマンガは、連載時に読んでいたので印象に残っている。メインは薄気味悪さのはずだが、作者は違った観点で説明している。そんな読み方もあるのかという驚きと、ちょっと強引すぎないか?という戸惑いがあった。

そのほかにもタレント本の書評もある。タレント本が論戦に勝つテクニックを語っているらしいのだが…。ごく一般的な話を強引に論戦のテクニックへとつなげるあたり、これこそが、作者のテクニックのように感じてしまった。

全編通して、作者が紹介する作品は例外はあるにせよ、非常に高度だ。「資本論」や「新約聖書」など、タイトルは知っているが読んだこともなく、ほとんど興味もない者にとっては、辛かった。というよりも、書籍自体のレベルに引っ張られる形で、作者の書評もとんでもなく難解になる。

何の気なしに軽い気持ちで読むと全く理解できない。というか、途中で挫折してしまう危険性すらある。そんな状況だけに、自分は流し読みしてしまった。本作のメインは、難解な書籍の紹介にあるのだろうが、それを楽しめないと辛いかもしれない。

相変わらずの難解さはいつもどおりだ。




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