季節風 冬  


 2011.1.13  冬に読むにはもってこいの作品 【季節風 冬】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

ちょうど今の時期にぴったりな作品だ。ちょっと泣け、ちょっとホンワカするようなゆったりとした作品。猟奇的殺人が起きたり、不可解なミステリーなどではない。読み終わると今の自分より少しだけ人に優しくなれるような、そんな短編集だ。ごく普通のどこにでもある日常の中で遭遇するちょっとした出来事。その裏に隠れている気持ちを作者はサラリとくみとり文章で表現している。強烈なインパクトがあるような作品ではないが、通勤時間などにちょうど良い分量の短編のため、気軽な気持ちでサラっと読めるのが良い。短編集のくくりとしては冬という共通テーマだけなので、中身は様々だ。もしかしたら、本作の短編の中で実生活とダブる作品があるかもしれない。

■ストーリー

出産のために離れて暮らす母親のことを想う5歳の女の子の素敵なクリスマスを描いた『サンタ・エクスプレス』ほか、「ひとの“想い”を信じていなければ、小説は書けない気がする」という著者が、普通の人々の小さくて大きな世界を季節ごとに描き出す「季節風」シリーズの「冬」物語。

■感想
サラリと読める短編の中でも印象深いものがある。「じゅんちゃんの北斗七星」は小学四年生ながら、人とは違うじゅんちゃんのことがだんだんと気になっていく。この二人の関係が、大人になる過程でかっこつけたがる年頃の男の子が感じる思いをリアルに表現している。もし自分がこの主人公の男の子の立場だったらと考えると、いろいろなことを想像してしまう。ある意味残酷な現実かもしれないが、すべてがハッピーエンドになるわけではない。この妙なリアルさが良い。

「サンタ・エクスプレス」は未来の自分に掠っているようで興味深かった。ものの分別がわかる年頃の娘に、ちょっと距離を置かれる父親。複雑な中にもどこかで娘と二人っきりになることを避ける父親。このあたりの心境は、悲しいくらいによくわかる。実の娘であったとしても、相手が距離をあけようとしているとき、強引にその距離を詰めるというのは勇気がいることだ。息子であればまだやりようはあるが、これが娘となると…。父親のリアルな心と、それを理解した母親の心憎い演出に暖かい気持ちになってしまった。

「バレンタイン・デビュー」は男なら誰もが感じることを、父親目線で息子に対して余計な気を使っている。この的外れな気遣いが妙に面白い。自分の経験から得た教訓なのだろうが、はたからみると不自然でしょうがない。はっきりいえば、こんな父親はいないと思うが、虚構の中でのみ存在すると考えると楽しくなる。なぜか息子の立場で読んでしまったが、息子としたら余計なおせっかいにむかつきながらも、どこかうれしくなるかもしれない。

ホンワカとした短編集。今の時期にぴったりだ。




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