麒麟の翼


 2013.2.6     加賀の個性が光る 【麒麟の翼】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作を事前に読んでいたが、犯人を忘れていたので、先入観なく楽しめた。が、犯人を忘れたのは、あまりインパクトのある内容ではなかったからだ。ドラマの新参者を見ていれば、キャラクターについては問題ない。相変わらず加賀の個性が光り、地道な捜査で真犯人を暴き出す。事件のミステリー的な面白さはない。ポイントは、被害者がなぜ日本橋の麒麟の翼の下まで瀕死の状態で歩いたかということだ。原作を読んだ際には、印象はほとんどなかった。つまり、説得力がないように感じたのかもしれない。映像として事件の推移を分かりやすく追いかけてくれるので、感動ポイントは誰もがわかるように強調されている。確かに感動するのだが、よく考えると、あまりに強引すぎる展開にちょっとシラけてしまった。

■ストーリー

東京・日本橋で男性の刺殺体が発見。被害者・青柳武明は腹部を刺されたまま8分間も歩き続け、翼のある麒麟像の下で力尽きた。刑事・加賀恭一郎は青柳の行動に疑問を抱き…。

■感想
新参者がヒットしたので、映画化されたのだろう。ただ、新参者自体がドラマだから成功したのであって、映画化としてのインパクトはどうなのか。原作を読んだ時点で、その疑問がわいてきた。事件としては、ただの傷害致死事件だ。そこに密室だとかアリバイ崩しのたぐいはない。ただ、事件の被害者がなぜ瀕死の状態で歩き回ったのか。そこには、被害者とその息子だけにしかわからない大きな秘密があった…。序盤ではひとつの犯人像を想像させ、後半で思いもよらない人物が犯人として浮かび上がってくる。セオリーどおりだが、その過程に強引さを感じずにはいられない。

原作では、加賀の信じられないほど地道な捜査というのが印象深かった。本作ではそのあたりはサラリと流され、その先にある、事件を追いかける加賀の執念の方を強く感じた。普通に考えれば、被疑者死亡のまま事件を収束させるのだろう。それを被害者が息絶えるまでの動きに疑問をいだき、執念で捜査を続ける。強烈なインパクトがあるのは、やはり事件の裏に隠された秘密だ。後半ではその秘密が怒涛の展開で暴露されていくのだが、衝撃度は少しもおさまらない。

シリーズとしての積み重ねがあるだけに、ファンは多いのだろう。原作ファンやドラマファンならばそれなりに楽しめるはずだ。ただ、何の予備知識もなく本作を見たとしたら、映画としてどうなのかと思うかもしれない。内容的には、2時間ドラマでも十分な内容かもしれない。あえて本作を映画化した意味というのをどうしても考えてしまう。もしかしたらシリーズとして続いていくのかもしれないが、人形町をベースとするのには、もう限界かもしれない。

シリーズの根強いファンならば、間違いなく楽しめるだろう。



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