カンタ  


 2013.1.23    ライブドア騒動そのままだ 【カンタ】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

前半と後半で物語のトーンが大きく異なる作品だ。前半部分では、発達障害児であるカンタと近所に住む幼なじみの耀司との友情物語となっていた。それが、後半ではカンタの発達障害についてはほとんど関係なく、ただ耀司が振興企業として昇りつめていく過程と崩壊を描いている。後半部分はあきらかにライブドア事件を意識している。耀司がホリエモンで、カンタが財務責任者だ。となると、結末は自然とある方向へと繋がっていく。カンタが発達障害を抱えたまま、厳しい社会で成長していく物語かと思いきや、後半から思いもよらない方向へと動いていく。恐らく、執筆中にライブドアの騒動が持ち上がり、それに影響されたのだろう。村上ファンドまで登場し、誰もが知るあの事件を、ほぼそのままなぞっているのが面白い。

■ストーリー

携帯ゲーム会社「ロケットパーク」を設立し一躍時代の寵児となった耀司。さらなる事業の拡大を目指して企業買収にのりだしたが、マネーゲームに翻弄され命を狙われることになる。いまこそ亡き母との約束を守るときだ。親友・耀司を守るため、カンタはある決意のもと沖縄へ旅立つ。

■感想
発達障害のカンタと幼馴染の耀司。発達障害の児童がどのような行動をとり、周りにどんな影響を与えるのかが描かれている。耀司がカンタをかばい、兄が発達障害をもつ姫菜もカンタをかばう。このあたり、どことなく重松清風な流れとなっている。普通の児童は異質なカンタを排除しようとする。普通ではないことを嫌う日本の社会において、カンタはどのようにして生活していくのか。カンタと耀司がそれぞれに問題を抱えながらも助け合って生きていく姿というのは、少なからず感動させる何かがある。この前半部分は、非情に興味深く読むことができた。

中盤以降、耀司が”金”の重要性に気付き、自由になるためには金が必要だと強く感じるエピソードがある。それ以降、耀司はバイトで稼いだ資金を株に投資し、起業して一躍寵児となる。このあたり、世間の雰囲気をそのまま作品に反映させているのだろう。株ブーム。デイトレーダーやIT長者の登場で世間が浮かれ、その中でライブドアが登場する。作者独自の視点で携帯ゲームに目を向けたのはすばらしいが、その後の展開は、ライブドア事件の流れそのままだ。実在の出来事を物語りに組み込むのは作者の得意な方式だが、ここまであからさまな流れには驚いた。

ライブドア事件の結末をそのまま連想させるような流れとなる本作。カンタの発達障害がほとんど意味をなさず、カンタが数字に強いということだけで、財務責任者となっている。発達障害は、生活する上で必要な能力が欠如する代わりに、特定の能力が飛びぬけて優秀だという流れになっていたはずだ。カンタは数学が大得意で、それを生かした何かをするはずが…。ただの企業の財務責任者になっている。発達障害の男が財務責任者になどなれるのだろうか。無理矢理ライブドア事件に結びつけたいがためにこうなったのだろう。

前半の流れで物語を読んでみたかった。




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