神様が殺してくれる  


 2013.10.2     神が起こした殺人事件 【神様が殺してくれる】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

ヨーロッパが舞台の物語。女のように美しい男、リオンが物語の鍵をにぎる。「神が殺した」という言葉と、神として名指しされた僕。物語は僕目線で進むのだが、男女の性別が大きなポイントとなる。登場人物の名前が直感的に男女を判断できるものではないので、多少の混乱がある。男かと思ったキャラクターが実は…。その逆もある。

殺人事件に関係すると思われるリオン。そして、リオンの証言。僕が事件の犯人に仕立て上げられた理由、そして本当の犯人は誰なのか。マフィアや精神科医が登場し、リオンをめぐる不可解な動きが続く。叙述トリックであることは間違いないが、序盤で犯人が分かるようなことはない。あっと驚く犯人ではないが、意外なことは確かだ。

■ストーリー

パリで往年の大女優が絞殺された。両手首を縛られ現場で拘束されていた重要参考人リオン・シャレットは「神様が殺した」と警察で証言。彼は同時にその神の名前として僕の名を挙げた。が、僕に身に覚えはまったくない。リオンはかつて大学の寮の僕のルームメイトで、当時から多くの人をその美しさで幻惑した。

僕は卒業以来2年半、一度も会っていない。容疑者の特定はおろか、なんの手がかりもないまま、やがて起こった第2の殺人。ミラノで有名ピアニストが絞殺された。またもや現場には皆睡したリオンがいた。インターポール(国際刑事警察機構)に勤務する僕は、現地の警察と連携しながら、独自に捜査を始める―。

■感想
男でありながら女のモデルのように美しいリオン。学生時代のルームメイトという接点しかない中、突如発生した殺人事件の犯人としてリオンから名指しされる僕。連続する殺人事件には、常にリオンの影が付きまとう。物語の流れとしてリオンが何かしら秘密を抱えているように思えてしまう。

怪しげな精神科医と結託し、死んだと思わせ国外へ脱出するリオン。僕が追いかけるのは殺人事件の犯人としてというよりも、なぜ?という疑問を解消したいがためにリオンを追いかけ続けているように感じた。

ヨーロッパを舞台とした作品。そのため、登場人物たちはカタカナ名だ。直感的に性別を判断することが難しく、一瞬このキャラが男か女か混乱する場合がある。本作においては、この男女の区別というのが非常に重要なポイントとなっている。

事件の被害者が男女関係なく選ばれ、ただひとりリオンだけは変わらない。となると、必然的にリオンが犯人か?ということになる。リオンの二重人格か、それとも本当に神のような存在が事件を起こしたのか。ヨーロッパ各国の刑事たちが協力し、世界を股にかけて犯人を追い求める物語だ。

犯人が判明すると初めて物語の意味がわかってくる。リオンがなぜ僕のことを神様と言ったのか。僕が殺したといった理由。叙述トリックであることは間違いない。ただ、物語を丁寧に読んだからと言って、事前に犯人がわかるような物語ではない。

ある事実が突然ふってわいたように登場してくるからだ。この驚きは衝撃的だが、トリックとしてはありきたりかもしれない。マフィアや精神科医など、周りのキャラで物語を複雑にしているが、ふたを開けてみれば、意外に小規模な身内的事件だと思えてしまう。

リオンの怪しさが物語を不思議なものへと昇華している。




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