2012.11.14 子どもから見たかあちゃん 【かあちゃん】
評価:3
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■ヒトコト感想
タイトルの「かあちゃん」を見た瞬間、作者のことだから、母親との関係で涙なくして読めない物語なのかと思ったが、違っていた。かあちゃんという響きから、田舎のお母さんを想像しがちだがそうではない。様々なパターンの母と子どもの物語を、子ども目線で描いている。第1章では、まさにタイトルの「かあちゃん」の雰囲気そのままだ。幸せになることを禁じたかあちゃんとどのように接するか。息子の苦悩と、かあちゃんがそうなった経緯が語られている。本作ではそこから登場人物たちが数珠繋ぎに代わっていき、最後に1章のかあちゃんに戻ってくる。いじめ問題あり、親子関係あり、離婚問題あり。すべては母親との関係を子ども目線で描いた作品だ。
■ストーリー
同僚を巻き添えに、自らも交通事故で死んだ父の罪を背負い、生涯自分に、笑うことも、幸せになることも禁じたおふくろ。いじめの傍観者だった日々の焦りと苦しみを、うまく伝えられない僕。精いっぱい「母ちゃん」を生きる女性と、言葉にできない母への思いを抱える子どもたち。
■感想
「かあちゃん」という響きから連想するとおりの物語は1章と8章しかない。その他は、わりと現代的で、子どもが母親に対する思いを描いている。親友がいじめられているのを傍観しただけでなく、一緒になっていじめに参加した少年の話や、いじめの首謀者の話など、必ずしも母親が鍵となるわけではないが、子どもが親に対して言えない悩みなどが語られている。基本は、重松清らしい作品なのだが、かあちゃんというタイトルからすると、それほどかあちゃん色は強くないように感じられた。
第1章のかあちゃんがあまりにもその背負ったものの重さが衝撃的なため、その他のかあちゃんが霞んでしまっている。育児休暇もほどほどに教師に復帰したかあちゃんなどは、ちょっとした働くお母さんの苦悩としての物語だ。母親がボケて下の世話に右往左往するかあちゃんの話であっても、必死で頑張る姿を子どもが見て、どう思うかという物語だ。いろいろなパターンがあり、もしかしたら、どこかのかあちゃんに感情移入でき、かあちゃんの強さをあらためて認識するかもしれない。
幸せになることを禁じたかあちゃん。なぜそこまで?と思うだろう。事故という不幸な出来事ですませられない状況なのかもしれないが、あまりに重荷を背負いすぎだ。それがかあちゃんなのかもしれない。本作のかあちゃんたちは、自分は二の次、子どもや家族のことを第一に考えるかあちゃんばかりだ。それがわかっているからこそ、子どもたちはかあちゃんの期待に答えようと、無様な姿を見せられないと考える。いじめにあっているなんて言えるわけもなく、カツアゲされたなんて話せるはずもない。かあちゃんがすばらしいからこそ、子どもは多少なりとも影響を受けるのだろう。
かあちゃんの物語というより、親子関係の物語だ。
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