2011.6.8 古事記をベースとした人と神の話 【女神記】
評価:3
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■ヒトコト感想
はるか昔の神の話と、巫女の家に生まれた姉妹の話をからませ、女神の苦悩を描いている。難しい作品であることは間違いなく、古代の神々の存在と、それらに翻弄される人々を描いている。この手の作品を楽しむには、神話についてある程度知っておく必要があるのだろう。イザナミとイザナキの関係や、二人がどのような存在だったのか。突き詰めたければ、古事記などを読むべきなのだろう。女神の話を淡々と語られ、海蛇の島に伝わるしきたりや、神が人間の女をはらませ続ける話などが続き、困惑するだろう。神話関係に興味がある人ならば、作中に登場する小道具や、登場人物たちの意味合いを理解し、楽しめるだろうが、そうでない人には辛いかもしれない。
■ストーリー
遥か南の海蛇の島、巫女の家に生まれた二人の姉妹。姉は大巫女を継ぎ、島のために祈り続けた。妹は与えられた運命に逆らい、島の掟を自ら破った。16歳で死んだ妹は、地下神殿で一人の女神と出逢う。―私はイザナミ、黄泉の国の女神です。
■感想
物語は巫女の家に生まれた二人の姉妹から始まる。島のしきたりに従い、運命を受け入れる者たち。16歳で死んだ妹が、黄泉の国でイザナミに出会い、そこから物語は神話をベースに大きく動いていく。まず、このベースであるイザナミ、イザナキの神話をある程度知っておかないと辛いだろう。二人の関係や、女神にどのような意味があるのか。イザナミとイザナキが離縁した原因や、大岩で出入り口をふさいでしまった話など、神話を元に描かれているだけに、その手の知識がなければ、何がなんだかよくわからなくなる可能性がある。
イザナミが千人の人を殺すのに対して、イザナキは千五百人の新しい命を生み出すと言う。神の行動と、それを傍らで見る女。登場人物が、神話をベースにされているので、神話に詳しい人は、出てくるキャラクターに対して、どういった理由があるのかを理解し、楽しめるのだろう。イザナキが人間となり、あちこちで子供を作り続ける。それに対してイザナミは黒い水をかけるだけで、そこにいる人の命を奪う。とんでもない神の力と、それに抗いようのない人の無力さをあっさりと描いている。
作者の作品らしい、ブラックな雰囲気はある。ただ、神話をベースにしているので、もともとそういう物語なのかもしれない。古事記をどの程度参照しているのか、どのあたりが作者のオリジナルなのかよくわからないが、内容を人に説明するのは難しい作品だろう。それとともに、この作品の面白さというのをどこに見出すのかも難しさの一つかもしれない。神話好きには間違いなくお勧めできるのだろうが、それ以外の人、特に作者のファンでもなんでもない人には辛いかもしれない。
神話にどの程度興味があるか、それがすべてだ。
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