2013.8.29 世界を変える仕組み 【ジグβは神ですか】
評価:3
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■ヒトコト感想
久しぶりのGシリーズ。と言いつつも、内容は全シリーズを通した流れになっている。そのため、Gシリーズだけでなく、S&MシリーズやVシリーズを読んできた生粋の森博嗣ファンでなければ楽しめないだろう。過去のシリーズの主役たちがせいぞろいする。その理由は真賀田四季が絡むからだ。
すでにおなじみとなったパターン。そこに、ミステリー的なトリックがあるわけではない。事件が起こる。それは奇妙な事件だが、そこに大きなインパクトはない。真賀田四季が絡むのならば、マインドコントロールでなんでもありとなってしまう。謎の宗教施設という部分がかなり怪しげで興味を惹かれたが、閉鎖されたコミュニティでの事件という差別化を図っているのだろう。
■ストーリー
芸術家たちが自給自足の生活を営む宗教施設・美之里。夏休みを利用しそこを訪れた加部谷恵美たちは、調査のため足を運んでいた旧知の探偵と再会を果たす。そんななか、芸術家の一人が全裸で棺に入れられ、ラッピングを施された状態で殺されているのが発見される。見え隠れするギリシャ文字「β」と、あの天才博士の影。萌絵が、紅子が、椙田が、時間を超えて交叉する―。ついに姿を現した天才博士。Gシリーズ最大の衝撃。惹かれ合う森ミステリィ。
■感想
謎の宗教施設・美之里。ここで巻き起こる奇妙な事件。そして、巻き込まれる恵美たち。シリーズの定番的な会話の数々。特に合理的な会話を良しとする雰囲気が、やはり森博嗣作品らしいと感じずにはいられない。海月など、明らかに人間的に欠陥のある受け答えをしているが、それらは恵美たちにとってはすでに慣れ親しんでいるので受け入れている。
久しぶりにこのシリーズを読んだが、相変わらず突き抜けている。コミュニケーションをあえてとらないようにしているのではないかと思えるほど、そっけない態度の海月。これこそ、THE理系作品だ。
事件は真賀田四季の痕跡が見え始めた段階で一気にヒートアップする。集まる警察たち。そして、萌絵のオマケ的な登場の仕方。赤柳が女になっていたというショッキングな出来事もあるが、Vシリーズで一番好感のもてた保呂草が登場するなど、ファンにはうれしいオマケもある。
真賀田四季が絡むと、世界一の天才ということで、どうしても壮大なスケールとなる。あらかじめすべてを計算し、100%の状態とする。すべては真賀田四季が仕組んだシナリオ通りに進んでいるらしい。この恐ろしいまでの能力は、魅力的でしかない。
作者はどこまで真賀田四季の能力を表現できるのか。シリーズ全体を通して、抽象的な意味での真賀田四季の目的は語られていた。本作ではとうとう具体的な意味での目的が説明されている。真賀田四季ならばやってのけてしまいそうだが、あまりに壮大すぎて想像ができない。
美之里の管理人に指示を出す謎の人物も、実は真賀田四季が…、なんてことをにおわせている。当然ながら、本作だけでは物語として成立していない。もし、本作で初めて森博嗣作品を読む人がいたならば、面白さの十分の一も理解できないことだろう。
このシリーズに結末は存在するのだろうか。
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