インテリジェンス人間論  


 2013.3.16    大物政治家の素顔 【インテリジェンス人間論】

                      評価:3
■ヒトコト感想
国家の罠」の強烈な呪縛から逃れられない。作者が様々な人物について語るのだが、日本の政治家やロシアの政治家についての記述は興味深い。ただ、それは「国家の罠」に描かれていたことと、ほとんど同じだ。そのため、「国家の罠」から新たな事実が登場するということはほとんどない。

インテリジェンスの視点から人物を分析しているのだが、作者の頭の良さばかりが印象に残っている。そして、歴史上の偉人の話や、神学の話などはあまりにもレベルが高すぎてついていけない。知識のレベルがある程度高くないと、本作の後半は楽しめないだろう。結局は、「国家の罠」で大部分が描かれていたことのみ楽しめるということで、自分にとっては新たな何かがあるという感じではなかった。

■ストーリー

権力者はだから面白い。外務省在籍時代に間近で接した、歴代総理やロシア首脳の意外な素顔、さらには誰もが知る歴史上の人物の精神にひそむ生々しい野心と欲望に、インテリジェンスの視点から切り込んだ異色の人物論集。国際政治の最前線で、外交の武器となる人間観察力を磨いた著者ならではの、ディープな知見と圧倒的な筆力で驚くべき、でも愛すべき権力者の真実の姿を炙り出す。

■感想
権力者の知られざる一面を読めるのは本作だけだろう。鈴木宗男や橋本龍太郎など、日本の政治家と外務官僚の関係など、作者が内部から見た状況というのは非常に興味をそそられてしまう。もし「国家の罠」を読む前に本作を読んでいたら、かなり惹きつけられたことだろう。

物語としてもすぐれた「国家の罠」を読んだあとでは、期待値が大きいだけに本作のハードルは自然と高くなってしまう。政治家以外には、歴史的偉人や神学者などの人物論があるのだが、それらは非常に敷居が高い。

そもそも神学論に興味がないので、出てくる言葉になじむことができない。作者との知識レベルの差がありすぎるので、ついていけないと言った方がいいのかもしれない。歴史的偉人についても、誰もが知る有名人ではなく、マニアックな論客について語っている。

作者の人間観察力と考察力ですばらしい人物論となっているのだろうが、ベースとなる人物を知らないので、興味がわいてこない。スパイの話や、わりと下世話な話は楽しめるのだが、根本にある難解な話にはついていけないというのがある。

作者の適格な文章は、難しい内容も理解しやすく感じるのだが、それでもレベルがあまりに高すぎるとついていけない。作者のルーツである両親の話や、普段どのような生活をしているのかが微かに描かれており非常に興味深い。

メディアで報道されたイメージは、「国家の罠」でくつがえり、本作を読んで少しまた印象が変わった。私生活では、3時間半の睡眠で、読書と作家としての仕事をこなす。なんだかとんでもない超人のようだ。ひとつ残念なことは、プライベートの趣味的なものが一切表現されていないことかもしれない。

作者は基本的に事実を適格に表現するのにすぐれているのだろう。今後、今までの経験以外の物語を作るとなると、どうなるのか気になるところだ。




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