星のかけら  


 2013.8.7     子供向けと侮れない 【星のかけら】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

小学生向けの雑誌に連載された物語。小学生向けだけに、それなりに易しい物語となっている。イジメの問題や生きるとは何か、死ぬとは何なのか?が小学生にもわかりやすく描かれている。そして大人が読んでも、何かしら感じるものがある。小学生ならなおさら感化されることだろう。

生きているのなら、一歩前に足を踏みださなければならない。引きこもりの中学生や、いじめっ子なども登場し、小学生なりの社会をしっかりと描いている。大人の綺麗ごとではない。子供なりのプライドもしっかり描かれており、小学生が共感できる部分は多いだろう。もちろん、大人が読んでも、その時の心境によっては、かなり心に響く物語かもしれない。

■ストーリー

それを持っていれば、どんなにキツいことがあっても耐えられるというお守り「星のかけら」。ウワサでは、誰かが亡くなった交通事故現場に落ちているらしい。いじめにあっている小学六年生のユウキは、星のかけらを探しにいった夜、不思議な女の子、フミちゃんに出会う――。生きるって、死ぬって、一体どういうこと? 命の意味に触れ、少しずつおとなに近づいていく少年たちの物語。

■感想
小学6年生のユウキはイジメられつつも、不思議なお守りである「星のかけら」を手に入れる。ユウキの状況は非常につらい。イジメられてはいるが、小学生なりのプライドで親や先生には言えない。このあたり、作者の作品は、小学生なりの社会を描くのがうまい。

単純にイジメから逃げ出すのではなく、イジメにあっていないふりをする。ユウキの内心の葛藤というのは、本作を読む小学生にも共感できることだろう。大人の社会にも、大人なりのプライドがあり、それは本作の状況となんらかわりはない。

交通事故現場に落ちていると言われる「星のかけら」。少しのファンタジーで、小学生に生きる意味と死ぬということを説明している。小学6年にでもなれば、生きることと死ぬことの意味ははっきりわかっているはずだ。

しかし、本作では引きこもりの少年や過去を引きづり前に進めない少年などを引き合いにだし、生きることは一歩前に足を踏み出すことだと語る。小学生に引きこもりがどれほど身近かわからないが、生きているのに死んでいる状態ということと、ユウキが勇気をもってイジメを跳ね返すあたりが、良い対比になっている。

生きることの意味。死んだはずのフミちゃんが、星のかけらでよみがえる。娘を亡くしたおばさんや、友達を亡くした子供。小学生たちは、それぞれ心に悩みを抱えている。それも、自分たちではどうしようもない、親の離婚なども影響している。小学6年生であれば、そのあたりもしっかりと理解できるだろう。

親の都合、友達との関係。大人の人間関係に引けをとらないほど複雑な関係のため、子供といえどもストレス社会には違いない。そんな複雑な子供たちの状況を描いている作品なだけに、子供の気持ちを忘れたおじさんであっても問題なく共感できる作品だ。

子供向けと侮ってはならない。




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