北方領土特命交渉  


 2013.2.23     多少、言い訳がくどいが… 【北方領土特命交渉】

                      評価:3
■ヒトコト感想
国家の罠」の臨場感を期待していたが、やはり「国家の罠」がすばらしすぎたため、インパクトは弱い。北方領土交渉における秘密の暴露を期待したが、ほとんどが「国家の罠」で描かれていたことの焼き直しだ。そればかりか、佐藤優が聞き役で、鈴木宗男がほとんどすべての重要な部分を語っているインタビュー形式のため、過去の恨みつらみを晴らすように実名で相手を批判しているのはすばらしいのだが、今となっては、ただの言い訳のようにすら感じてしまう。佐藤優と鈴木宗男側だけの言い分をひたすら聞かされているだけなので、公平な判断はできない。それでも、北方領土交渉がどのような状況にあり、結果としてどうなったのかが赤裸々に語られるのはすばらしい。

■ストーリー

驚愕のインサイド・ストーリー 総理大臣の「極秘指令」とは何か?最初で最後の対論島は返還寸前だった!銃撃事件の真犯人は?北方領土交渉のなかで私は、ほとんどの外務官僚が知りえない「特命」を複数の総理大臣から受けていた。それらの「特命」について、これまで私は「貝」になったつもりで沈黙することが国益に適うと考えていた。しかし、日本外交が八方ふさがりという状況に陥ったいま、局面を打開するためには、私の受けた「特命」を国民に公開することに意味があるのではないかと思うようになった。これが本書を出版することになった最大の動機である。

■感想
北方領土交渉における極秘指令。鈴木宗男と佐藤優がどのような使命で動いていたのか。国策捜査のすえ逮捕された件の言い訳のようにすら感じてしまうのだが、「国家の罠」を読んだ今となっては、特別新鮮な驚きはない。もしかしたら順番として本作を先に読み、その後、「国家の罠」を読んだ方が良いのかもしれない。「国家の罠」が佐藤優の、出来事をしっかりと整理し、相手に理解させるための文章を読んでしまうと、鈴木宗男のインタビュー形式の文章というのは、生の声という雰囲気は伝わるが、ただの言葉の羅列のように思えてしまう。

結局、今も北方領土はロシア領のままだ。本作にあるように、どこかで方針を間違えたために今に至るのか、それとも最初から返還のチャンスはなかったのか。作中では、あと少しで北方領土が返還されていたという論調で描かれている。国家間の交渉の信憑性はよくわからない。言葉の確度についても、あいまいな気がした。日本のとらえ方が勝手に良い方向へとらえていただけのような気もしなくもない。結果として北方領土は返還されず、それが最終的に国策捜査に繋がったのだと「国家の罠」に描かれていたが、まさにそのとおりだと思わずいにはいられない。

北方領土が返還されなかったことが、結果としてはすべてだ。その言い訳をひたすら鈴木宗男が語っているように思えて仕方がない。「あの時こうしていれば」なんてことを描かれても、それは仮定の話でしかない。今の政府の方針にダメだしをし、自分たちならば北方領土返還にこぎつけることができたといわんばかりの勢いがある。今現在の日本とロシアがどのような関係なのかよくわからない。それでも、当時どのような外交方針でロシアと付き合っていたのかがわかるのは興味深い。言い訳がましい部分が多いのは確かだが、メディアで報道された部分の裏側を知れたのは面白い。

「国家の罠」で日露外交に興味をもった人は読んでみると良いだろう。




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