必死剣 鳥刺し


 2013.8.5     ラストの鳥刺しの衝撃たるや 【必死剣 鳥刺し】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
藤沢周平原作作品の映画化はいくつか見ているが、どれも最後に強烈なインパクトを残している。そんな中で、もしかしたら本作が一番のインパクトかもしれない。「隠し剣 鬼の爪」での衝撃から、かなり今回も衝撃があることにはかわりない。三左エ門が朴訥とした表情で、語る。何か権力を欲したり、欲にまみれた上での行動ではない。自分の信念を貫き、任務をまっとうする。

剣の達人だけに、必死剣鳥刺しというのがどのような剣なのか、気になるところだ。そして、それは最後の最後に明らかとなる。本作では、はっきりと良いキャラと悪いキャラが分かれている。そして、良いキャラはとことんかっこよく、憎らしいキャラはとんでもなく憎たらしい。さらには、最後の修羅場が衝撃的すぎる。

■ストーリー

海坂藩の物頭・兼見三左エ門が、藩主・右京太夫の愛人・連子を城中で殺害する事件が発生。しかし、意外にも寛大な処分が下された三左エ門は、1年の閉門後、再び藩主に仕えることになり…。

■感想
三左エ門が藩主の愛人を殺害する。冒頭から衝撃的な出来事よりスタートする本作。いったいどんな理由で三左エ門が凶行へ走ったのか。藩主の愛人がいかに横暴で周りの侍たちから疎まれていたかが描かれ、三左エ門の行為が藩のことを考えての行動だとわかる。

その後、三左エ門は打ち首かと思いきや、そうはならない。三左エ門の待遇は厳しいはずが、その後、逆に出世してしまう。寡黙で朴訥とした男が自分の信念を貫きとおす部分がすばらしい。三左エ門のピンと背筋が伸びた正座は、三左エ門の性格をそのまま表しているようだ。

必死剣鳥刺し。これが本作の鍵となる。誰も知らない幻の剣。使い手自身も瀕死の重傷の際に使える剣。藤沢周平作品は、最後の最後に強烈なインパクトがある。本作も当然そうなのだが、他の作品と比べて明らかに強烈度合が上だ。

最後の修羅場など、真っ青な表情で落ち武者のように髪の毛を振り乱して戦う三左エ門の姿は衝撃的だ。鳥刺しという名前がイメージするものは若干違うが、伏線として物語中盤に、鳥刺しをイメージするような描写もある。血しぶきが飛び散る作品であることは間違いない。それらに耐性がない人は注意が必要だ。

本作では、愛人に翻弄される情けない藩主や、藩主の考えを利用し、三左エ門を罠にはめようとする男や、藩主の横暴をいさめようとする勇敢な男など、様々な侍たちが登場する。そして、明確なのは嫌な奴とかっこいいやつが、これでもかとはっきり分かれるところだ。

必ずしも三左エ門の味方ではないが、一本筋の通った考え方をし、領民のことを考え行動する男はかっこよすぎる。ラスト間近では、三左エ門と対決するのだが、その対決シーンはしびれてしまう。ラストの凄惨な場面よりも、息の詰まるような緊迫した場面として印象に残っている。

ラストの場面は、あえて残酷さを際立たせているのだろう。



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