ゴールデンスランバー


 2011.12.7  よくわからない一体感 【ゴールデンスランバー】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作の面白さがしっかりと表現されている。特に主人公の青柳が、原作のイメージそのままだ。どこかとぼけた雰囲気をもちながら、諦めずに前へすすむ。堺雅人の半笑いな表情がまさに青柳そのままだ。このキャラとその他豪華な出演者たちに支えられ、原作の魅力を十分表現できている。唯一難点を上げるとすれば、謎の殺人鬼の存在だろう。伊坂幸太郎作品を読みなれている人であれば、何の問題もないが、映画となるとそうはいかないだろう。あの人物の存在意義はなんのか?という疑問がつきまとい、全体としての評価を下げてしまうかもしれない。全体としてどこか変だが、一本芯の通った考え方を持つキャラたちなので、見ていて良い気分になってくる。

■ストーリー

野党初の首相となった金田が、仙台市内で凱旋パレードを行うその日、数年ぶりに大学時代の友人・森田に呼び出された青柳は、森田から「お前、オズワルドにされるぞ」「逃げろ。とにかく逃げて、生きろ」という忠告を受ける。爆発音がしたかと思うと、警察官たちが、二人が乗っている停車中の車に駆け寄り躊躇なく発砲する。青柳は、反射的に地面を蹴り、仙台の街中へと走り出す……!

■感想
原作を未読な状態で本作を見たとしたら、どうなのだろうか。ミステリアスな雰囲気で、巨大な力にはめられていく青柳に同情するだろうか。もしかしたら、はっきりとした黒幕の登場を願い、最終的にはその黒幕になんらかの天罰が下ることをイメージするのだろうか。だとしたら、本作は中途半端に感じるかもしれない。あくまでも、青柳が逃亡し、どのようにして巨大な力から逃げ切るかというのがすべてだ。その過程でヘンテコなキャラクターたちが協力し青柳を逃がそうとする。このよくわからない一体感というのが、見るものを興奮させる要素となる。

原作で感じた、諦めない気持ちというのを本作でも感じることができた。絶体絶命なピンチというのはあまり伝わってこないが、二転三転する流れは良い。基本的に原作に忠実なので問題はないのだが、アクションとしての見せ場を映像でそのまま見せられる利点はある。ボロボロの車で逃げまわる青柳というのは、どこか哀れ感を増幅させている。何年間も放置されていたオンボロ車が、バッテリーをのせ変えただけですんなり動きだすというのも突っ込みたい部分だが、そんなことを気にしてはならない。原作ではサラリと流せたが、映像になるとより気になるというのはある。

特筆すべきところは、ラストだろう。青柳の生存証明をいろいろな人に伝える場面だ。このあたりは原作でも強烈に印象に残っており、映像化してもそれは変わらない。無意味なこだわりというか、キャラクターとしての変な部分がここで活きてくる。他人が見ればまったく意味がわからないこと(映画を途中から見た人も同じ)だが、わかる人だけがわかるメッセージ。それがなんとも小粋というか、ヒネリがきいていて良い。思わず泣ける場面ではないのに、楽しさから涙腺が潤んでしまう。

原作の面白い要素をしっかりと表現できている作品だ。



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