覆面作家は二人いる  


 2011.10.17  二重人格お嬢様? 【覆面作家は二人いる】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

大富豪の令嬢が事件を解決する。ありがちなパターンかもしれないが、本作にはさらに作家と、二重人格的なものが付け加えられている。覆面作家シリーズだが、覆面作家である必然性が感じられない。担当者が相棒という意味では、作家の必要があるのだろうが…。雑誌編集者であるリョウスケが事件に遭遇し、美人お嬢様である千秋が解決するというパターンだが、明らかにこのキャラクターありきの作品だ。ミステリー的な謎よりも、屋敷の中では箱入り娘で、一歩外にでると人格が様変わりする千秋という風変わりなお嬢様の存在があってこそ成り立つものばかりだ。リョウスケの双子の兄が刑事というお膳立てもあり、外の千秋のドタバタがありながら、事件をあっさりと解決してしまうという流れだ。

■ストーリー

姓は「覆面」、名は「作家」―本名・新妻千秋。天国的な美貌を持つ弱冠19歳の新人がミステリ界にデビューした。しかも、その正体は大富豪の御令嬢…ところが千秋さんには誰もが驚く、もう一つの顔があったのだ。

■感想
このシリーズは覆面作家というのが強調されているが、本作に限っていえば、覆面作家である必要はない。二重人格お嬢様とでもした方が内容には合っている(あくまでも内容にあっているだけ)。覆面作家として活動し、その担当になったリョウスケとの繋がりという意味では、作家である必要はあるのだろうが、今のところ覆面作家だからと物語に大きな影響を与えることはない。本作の面白さは千秋の変化の激しさと、リョウスケと千秋のなんとなくお互いを意識し合う描写なのだろう。双子の兄がなんだかんだとかき回すのが、さらに面白さを増幅させている。

お嬢様が事件を解決するというのは、わりとありがちかもしれない。このシリーズの特徴は、外ではぶっきらぼうで荒っぽく誰に対しても敬語を使わない千秋と、屋敷の中ではおしとやかで外での行動に後悔する箱入り娘な千秋の変化だろう。リョウスケとの絡みであっても、外の千秋と内の千秋で大きく変わってくる。事件解決のプロセスも重要だが、その過程で千秋が巻き起こすドタバタが面白い。特にリョウスケの双子の兄であるユウスケの戸惑いが、他のキャラクターを引き立たせている。

千秋がリョウスケから話を聞くだけでほぼ事件の全容を解明してしまう。事件についての細かな仕掛けはそれなりに説明されているが、特別な驚きはない。千秋とリョウスケが警察のフリをして現場に乗り込むのが定番となっているが、突っ込みどころは多々ある。とんでもない事件であっても、なあなあで済ますことがあるのも大きな特徴の一つかもしれない。物語全体として、どちらかといえばコメディに近い雰囲気かもしれない。シリーズとしてある程度続くようだが、千秋のキャラクターの面白さでどこまで引っ張れるのだろうか。

覆面作家である必然性は今後でてくるのだろう。




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