永遠の仔2  


 2013.6.19      子を持つ親の気持ち 【永遠の仔2】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

前作の印象をそのまま引きずるように、三人の子供たちの過去と、成長した現在が描かれている。三人が出会った場所が、精神に異常をきたした子供たちが療養する病院だということ。そして、そこでは様々な症状をもった子供たちがいるということ。優希が入院した理由は、まだ本作ではわからない。他の二人も曖昧なままだ。

すべての元凶となりえるトラウマがはっきりしないまま、大人になった三人の周辺で事件が起こる。子供を虐待する親に対するすさまじい怒りというのを感じずにはいられない。子を持つ親としては、信じられないような出来事だ。幸せで前向きな気持ちになれる物語ではない。ただ、辛い結末を待つだけなのだが、読まずにいられない。

■ストーリー

霧の霊峰で一人の少女・久坂優希と二人の少年が起こした聖なる事件。その秘密を抱えたまま別れた三人が、17年後再会した。そして過去を探ろうとする弟の動きと殺人事件の捜査によって優希の平穏な日々は終わりを告げた-。

■感想
トラウマの物語である本作。優希たちのトラウマの原因ははっきりとしない。が、親子関係の問題というのは予想がつく。優希やその弟が母親に対して必要以上に反発するのは何かしら幼少期の問題があったからなのだろう。

根本原因がわからない今の状態では、優希たちがただ親に反発しているだけのように思えてしまう。その裏に隠れた拭い去れない記憶がはっきりすると、すべて納得してしまうのだろうか。少しふれただけで、必要以上に傷つく敏感な登場人物たちがそうなった原因というのは、興味がそそられる。

本作では、子を虐待する親が登場する。とんでもない親なのだが、同情すべき面もある。しかし、優希たちがその親に対して強烈な怒りをぶつけることで、読者の怒りを代弁しているような気さえしてくる。崩壊した夫婦関係。そして、子を愛するあまり虐待してしまう母親。

悲しいのは、母親を必死にかばおうとする子の存在だ。自分が子供を持つ親となると、独身時代に読むよりも受けるインパクトが強い。頭の中で想像し、絶対にありえないとは思うのだが、親の虐待のシーンと子供がかばう場面は、心が痛くなってしまう。

警察が三人の関係に気づきだすことで、物語に大きな変化がおとずれる。子供時代にどんな事件を起こしたのかわからない。が、三人だけの秘密というのは、強烈な引きの強さがある。子を虐待した母親の不審な死から始まる崩壊の兆しは、はっきりと見えてくる。

警察が介入することで、過去の事件が明らかになるのだろう。親子関係がメインの本作だけに、子供の立場よりも、親の立場として読むと心が苦しくなる。自分は絶対に虐待なんかしない、と思っていても…。ありえないことだが、怖さというのを感じさせる物語だ。

子を持つ親となってより感じる何かがある。




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